イノベーションを邪魔するものは、すべてなぎ払う。
茂木 これまで、日本対アメリカ、東大対ハーバード、というかたちで話を進めてきたけれど、日本を、イギリス、ドイツ、イタリア、フランスに置き換えても成り立つよね。抱える問題は共通していると思うんだ。
北川 はい、アメリカだけが特別なのではないか、って話ですよね。
茂木 ロンドンオリンピック前のイギリスに行って、現地の新聞を読んだら、「イギリスのIT企業がなかなか世界的企業にならない」ということを、すごく問題している記事があってさ。
北川 なるほど。
茂木 考えてみるとGoogle、Apple、Facebook、Twitter……ITの分野で世界的にサービスを発信し、トップを走っている企業ってほとんどアメリカ発だよね。
こうなると、イノベーションにおける、アメリカ固有のシステムが存在しているんじゃないかと思えてくる。
北川 それはあるかもしれません。アメリカにいて肌で感じるのは、本質的な価値に対する飽くなき追求の姿勢です。問答無用で立ち向かっていくというか、目の前の障害物はすべてなぎ払っていくというか、そういった部分での覚悟が、ハンパないんですよ。
茂木 そうかあ。たしかに、そこにポイントがあるのかもしれない。北川はハーバードで8年間、アメリカという国を観察してきたんだよね。その知見をもとに、この謎を解き明かせないかな。その飽くなき追求の姿勢の元にあるものって、なんなんだろう。
北川 やっぱり、「バラバラの出自をもった、いろいろな人が集まっている」という単純な事実じゃないですかね。価値観が多様なだけに、常に自分と他人のコンフリクトのなかで生きることを余儀なくされるんです。皮膚のカラーも、育ってきた文化も、まわりと共有できない。
茂木 多様性の問題ということ?
北川 はい。あるカルチャーの価値観でものを語っても、まったく受け入れてもらえないのが普通なんですよ。そこで、あなたと僕で共通していることってなんなの? となったときに、ワクワク感だったり、好奇心だったり……
茂木 イノベーションが共通言語だったということ?
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。