魔境のゆるキャラ
国東半島を初めて旅したときの印象をひとことで言うなら、それは魔境だった。秘境ではなく魔境。大分空港も隣接し、人里はなれた山奥というほどでもないはずなのに、まるで異界のような雰囲気。おそらくそう思ってしまった理由のひとつが、半島内のあちこちで見られる磨崖仏や石造仁王ではないかと思う。かつては修験道が発達していただけに、神仏の影が濃いのだ。
とくに石造りの仁王像にはそこらじゅうで出会った。仁王といえばたいてい神社仏閣の門前に立ち、訪れる人を厳しく睨みつけているものだが、国東半島では必ずしも睨みつけておらず、ユルい仁王が多い。表情が人懐こいものや、胴長短足で顔がでかいなど体躯もアンバランスだったりして、ちっとも怖くないのである。
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