第3回】ほんとうに大事なのは「お勉強」では身につかないスキルだ

経済が右肩上がりの時代はもうやってこない……。先行きの不透明ないま、せめて向こう数年を楽しく働き、充実して生きるためにはどうすべきか。40歳以下の各界のトップランナーたちがわかりやすくアドバイスするアンソロジー『5年後働く自分の姿が見えますか?』。今連載では、本書より経済学者の飯田泰之・明治大学准教授の論考をご紹介いたします。

 試験をして一律にその技量をはかることができるということで言えば、実は資格というのはマニュアル的な要素が強いのです。「お勉強」をすれば、誰でも同じように身につけられる。というよりも、お勉強で身につく部分があるからこそ「資格試験」にすることができるとでもいいましょうか。そうした定型的な知識や技能だけでは、なかなか「余人をもって代え難い」存在になることはできない。

 ほんとうに大事なスキルは、「お勉強」では身につかないところにあります。そしてその要になるのは、「コミュニケーション能力」、もっと言えば「コネ」「コネを作る力」だと私は思っています。

 弁護士にしても、格差のカベを乗り越えるのは人間関係を良好に築けるかどうかにあります。
 新米時代に「イソ弁(居候弁護士)」になるなら、できるだけ仕事の幅が広く、人脈も広いボスのいる事務所に入ったほうが得策です。それには先輩弁護士に気に入ってもらえないといけない。最終的には弁護士は自由業ですから、まずは就活同様のコミュニケーション能力が必要になります。

 独立したら、こんどは自分自身が弁護士としてどれだけ信頼を勝ち得て人脈を増やしていけるかがカギを握ります。依頼者は、自分の抱えているトラブルを話し、自分の代わりにうまく交渉してくれる人を探すわけですから、気持ちを理解してくれる人に頼みたい。有能らしいけれどとっつきが悪くて何を考えているかわからない人よりは、コミュニケーションのうまく取れる人に頼みたい、そう考えるのが普通です。知人を通しての紹介というのも、やはり人との関係性がものを言います。

 弁護士資格を得るには確かに勉強が必要で、勉強しないことには土俵に上がれませんが、その土俵で勝ち残って成功していけるかどうかは、コミュニケーション能力にかかっています。勉強は得意だけど対人関係がうまく結べないという人は、仕事を増やしていけない。コミュニケーションがうまく取れないことには、どんな資格も役に立たないのです。

 どの業界、どの職種に行くにしても、最も大事なのは人とのつながり、そしてそれを広げる力なのです。

 私がゼミに入ってきた学生に最初に指導するのは、自己紹介の仕方です。徹底的にダメ出しをします。大学生にやることかと言われそうですが、これは人生どこに行っても絶対に必要になるスキルだからです。
 さらに、私は「自分から気持ちよく挨拶する」「何かしてもらったらお礼を言う」「人に対して不機嫌そうな顔をしない」の三つを、「死なない程度に世の中をわたっていくための必須のスキル」と呼んでいます。最低限これだけできれば、なんとか生き抜いていける。どんな失敗をしても、過酷な状況に陥っても、生きていれば挽回のチャンスは訪れるかもしれないですしね。

 人と双方向コミュニケーションが取れること。臆せずに、人と関われること。友だち、知り合いが多いこと。それがさまざまな業界にまたがっていて、業種・業界を超えた交流があること。こういった能力は勉強してできるようになるものではありません。マニュアルにもならない。

 ほんとうに大事なのはそういう力を蓄えることです。

英語を勉強してどうなりたいの? 

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この連載について

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5年後働く自分の姿が見えますか?

飯田泰之

経済が右肩上がりの時代はもうやってこない……。先行きの不透明ないま、せめて向こう数年を楽しく働き、充実して生きるためにはどうすべきか。40歳以下の各界のトップランナーたちがわかりやすくアドバイスするアンソロジー『5年後働く自分の姿が見...もっと読む

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kadokawaone21 cakes更新!スキルアップで必要なことはただ漠然と資格の勉強をすることではありません→  4年以上前 replyretweetfavorite