自信」と「希望」を奪えば、人間を人間でなくすことができる

映画をよく観る土門さん。あまり感想を言わない彼女が、評判の高い「パラサイト 半地下の家族」のおもしろい考察を書いています。(連載第19回)毎週火曜日更新。いい映画って、その時の時世を反映して、浮かんだり落ち込んだりするけれど、土門さんも世界とリンクして落ち込んでる気がする。

サクちゃんへ

こんにちは。
お元気ですか?
わたしはちょっと鬱々としています。
ここ数ヶ月の疲れが出てきているのかな。それとも梅雨のせいでしょうか。

新型コロナウイルスは、少し落ち着いたのかと思いきやまた感染が広がっているようで心配ですね。東京にサクちゃんに会いに行ける日もまだ先かな、と思っています。

進んでいた物事が進まなくなったり、決まっていた予定がなくなったり。
がっかりすることも不安になることもまだまだあるけれど(それで鬱々としたりもするけれど)、でも確実に、経験を重ねることで強くはなっていると思うから、今はそれでよしとしたいと思います。

ー・-・-

ああ。ごめんなさい。

今日はなんだか朝から鬱々としているので(しつこい?)、筆がまったく進みません。
冒頭の部分だけ書くのに、なんと2時間かかりました。
書きたいことはいろいろあるのに、それをどう書いたらいいのかわからないのです。
なので、もう開き直って、思いつくままに書こうと思います。

わたしの仕事は「文章を書くこと」なのですが、時々こういう事態に陥ります。
こういう事態、というのはつまり「書けない」という事態です。
書きたい気持ちはあるのに、全然書けない。時間ばかり過ぎていって、時計を見るたびに顔を覆ったり、「うわー!」と叫びたくなります。

わたしは毎朝手帳を開き、今日やることを確認します。
午前は「Aの原稿を執筆」、午後は「打ち合わせ」と「Bの原稿を執筆」というように。
でも、この「執筆」というところは全然あてになりません。言葉が出てこない、納得できない、集中できない……そんなふうに、時間をとっていてもふいになることなんていっぱいあります。

あてにならないと思いつつも、わたしは懲りずに手帳に「執筆」と書き込みます。
あてにならないけれど、「執筆」と書き込まないと、絶対に書けないからです。

ー・-・-

昨日、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を観ました。
半地下住宅で暮らす貧しい4人家族が、あることをきっかけに、高台の大豪邸に暮らすIT企業の社長一家のもとに雇われ、そこで事件が起こる……という物語です。
とってもおもしろかったのですが、サクちゃんはもう観ましたか?

わたしはこの映画を観ながら、
「これは『人間(自存)』と『虫(寄生)』の境目の物語だ」
と思いました。

貧しい一家の父親はこう言います。
「“計画”を立てると、必ず人生その通りにいかない」
計画を立てるから失敗するのだ、失敗しないためには無計画でいればいい、と。

それを聞いた息子はどうするのか。自分の言葉通り、計画を放棄した父はどうなるのか。
その言葉が引き起こすラストシーンからは、目が離せませんでした。

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サクちゃん蘭ちゃんのそもそも交換日記

土門蘭 /桜林直子

東京でクッキー屋さんをしている「桜林直子(サクちゃん)」と、京都で小説家として文章を書く「土門蘭(蘭ちゃん)」は、生活も仕事も違うふたりの女性。この連載は、そんなふたりの交換日記です。ふたりが気が合うのは、彼女たちに世界の「そもそも」...もっと読む

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6manga6kissor6 "あてにならないと思いつつも、わたしは懲りずに手帳に「執筆」と書き込みます。 あてにならないけれど、「執筆」と書き込まないと、絶対に書けないからです。" 4ヶ月前 replyretweetfavorite