インフレ基調になると、「自分で何かしていないと損をするようになります」と言いました。これは若い世代に心得ておいてほしいことですが、景気さえ回復したら、何もしなくてもただ給料が増えたり、就職しやすくなったりするわけではありません。
自分で道を拓いていける人とそうでない人との所得格差はむしろ広がります。ざっくばらんな言い方をすれば、稼げるヤツが稼げるようになる。そんな中でこれからどのように働くべきか。賢く生きていくすべを、自分の頭で考えて、自分で切り拓いていく必要があります。
インフレになると「モノ」の値段が上がります。見落としてはいけないのは、私たちが提供している労働力というのもまた「モノ」だということ。私たちはみな、労働力を販売している販売事業主なのです。
会社勤めというのは、自分で事業をやったり何かを販売したりしているのとはまるで違うことだと捉えられがちですね。しかし、自分という個人事業主が、労働力というモノを会社に販売していると考えると、今までにはない視点を得られるのでしょう。販売事業主はその市場において、どんなモノだったら高く売れるのか、自分の店の商品の価値を上げることを考えていかなくてはなりません。
アメリカの経営学者マイケル・ポーター(1947~)は『競争の戦略』という著書の中で、収益を上げるために必要な要因を「五つの力(ファイブフォース)」として挙げています。
① 業界内の競争
② 新規参入の脅威
③ 代替品の脅威
④ 売り手の交渉力
⑤ 買い手の交渉力
この「五つの力」は、個人が労働力を高く売る条件にも通じます。
まず、業界内の競争。競争相手は、多いより少ないほうが有利です。続々と新規参入者が入ってきたりしないこ
と、代替する存在があまりないことも望ましい。これらをまとめると自分の価値を「余人をもって代え難い」ものとアピールできれば、労働力として高く売る交渉ができるでしょう。
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