たけだ・やすひろ(左)/2008年から現職。文化審議会国語分科会の運営のほか、「国語に関する世論調査」や文化庁ウェブサイト「言葉のQ&A」の執筆等を担当。
おざわ・たかお(右)/元都立高校教員。「国語に関する世論調査」の運営に携わる。共著に『主体的・対話的で深い学びを促す中学校・高校国語科の授業デザイン』(学文社)等。
──「国語に関する世論調査」はいつから始まったのでしょうか。また、言葉遣いの変遷や傾向はありますか。
平成7年からです。5年置き、7年置きと、調査の中に定期的に設けている問いもあります。
それらを見るに、自分や他人の言葉の使いかたへの関心が年々、上昇傾向にあります。
──上昇にはどういった理由が考えられますか。
理由は一概には言えませんが、近年ですと、ブログやSNS(会員制交流サイト)等の普及も要因の一つではないでしょうか。
誰しも情報発信者になり得るため、自身や他人の言葉の使いかたを意識する人が増えているのだと思います。表現一つで「炎上」も起こり得るので、言葉遣いに敏感になってきているのかもしれません。
──調査では、言葉の使いかたに関して「正しい」「誤り」といった表現を使わずに、「本来の意味」「本来とは違う使い方」といった表現を用いています。
実際に世の中に普及していて、すでに多くの人が使っている言葉遣いがあれば、それはもはや誤りとは言いにくい場合もあるでしょう。
そのため、私たちは「正誤」で割り切らないように気を付けており、最近は特にそのことを強調するようにしています。ニュースやクイズ番組では、調査内容を単純化して「○×」で取り上げたりしますが、言葉の意味は正誤を付けられるものではありません。
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そもそも言葉は変化するもの
平成30年に文化審議会国語分科会が、言葉遣いやコミュニケーションの在りかたについての審議を「分かり合うための言語コミュニケーション」という報告書にまとめ、公表しました。
その中で、「そもそも、言葉は変化するものであり、地域や共同体によって通用する言葉や言葉遣いが異なる場合もある。同じ意味を伝える表現が複数あるなど、正解は一つとは限らない」とあります。これが私たち文化庁のスタンスとも一致しています。
もちろん、明らかに誤った、またはおかしなケースもありますが、言葉はだんだんと変わっていくという観点を大切にしながら調査を行っています。
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