超黒歴史】とあるメンヘラの処女喪失活動【原罪モラトリアム】

2019年7月に休止した本連載ですが、突如「メンハピ特大スペシャル第0話」をお届けします。
元メンヘラで現ハッピーリア充のスイスイさんが、ずっとずっと書けなかったメンヘラの原点である「処女喪失活動」(!)を、とある覚悟とともに告白します。
また、8月6日に本連載をまとめた初の書籍『すべての女子はメンヘラである』を上梓。それに伴って、記事末に大事なお知らせがあります。

2015年。ミュージックステーションで、同期デビューのaikoと椎名林檎が並んで話していた。
トークのなかでaikoがデビュー前を振り返ると、苦笑しながら林檎ちゃんが言った。

「それは黒歴史だからやめて」と。

突風のような驚きが走ったあと力が抜けた。
そうかあの林檎ちゃんにも「黒歴史」と認識してる時代があるんだあ……と混乱しつつ安堵した。


で。
突然だけどそんな彼女が黒歴史と称した90年代に、彼女を崇拝していた14歳の私が何をしていたか。

それぞまさに、私の黒歴史の底の底であり漆黒の歴史。 何を隠そう「処女喪失活動」(以下"処活"と呼びます)にやっきになっていた。

そしてそれこそ、私のなかのメンヘラ卵が本当の意味でうごめきだした根源だと、ついに告白したい。


ここで一旦挨拶をはさむね。

はじめましての人も、お久しぶりの人もお元気ですか。スイスイです。

独自の大作戦でハードメンヘラを脱し、現在はストレスフリーなウルトラリア充になりました。 CMプランナーを経てエッセイストとして活動しつつ、8月には念願の初書籍(!)が出ます。
リアルの充実が止まりません。

そんな私がcakesで約3年半連載していた脱メンヘラ物語「メンヘラ・ハッピー・ホーム」。
昨年、私の突然のワガママにより最終回したはずだったのですが……、今回はありがたいことに我がメンヘラ紀元前、つまり「メンハピ特大スペシャル第0話」として最新の気づきをお届けできることになりました。
(ラスト、絶叫しながら伝えたいお知らせがたくさんあるので、最後まで読んでね)

わたしの処女喪失物語

14歳の私が「処活」を爆裂的に加速させたのは、“ある手紙”がきっかけだった。

今までどこにも書かなかった。
いや、正確には3年ほど前、この連載で一度書こうとしたものの、掲載直前「やはり載せられないです」と私から急遽ボツにしてもらった。
あれほど自分を晒してきたのに、この件だけは難しかった。

なぜそんな話をこのタイミングで書き始めているかというと(その理由は後半書くとして)……、きっかけは先日、書籍の編集者さんから「スイスイさんのメンヘラ年表を書いてください」と言われたことからはじまる。

それまで私は自分がメンヘラになった始まりを「17歳の大失恋」だと思ってた。
(いや実際そうだと思う。だけどその元の元となった出来事があったのだ)

ぼうっとペンを取り、年表としてまっさきに書いたのは〈14歳 母からの手紙〉という一文だった。
「そこ……?」と自分の文字に意識を殴られた。

書籍の執筆作業が大詰めで、自らのメンヘラ性に毎日とことん向き合った結果かもしれない。
これまで目を背け続けてきた、開かずの扉を開けることとなった。


1999年のあの日。
14歳の処女だった私は、母から突然、長い長い手紙を受け取った。

初彼氏と別れた直後だったと思う。
手紙をもらうなんて初めてのことだった。

手紙には以下の内容が書かれていた。

・ひとりきりで男の人の部屋には入らないこと
・それは性行為の同意とみなされても仕方ないということ
・かつて母の友人がひとりで男の人の部屋に行った際、そこにいた複数人から性被害を受けたこと
・その被害の詳細

それが便箋何枚にも渡って綴られていた。

その手紙を読んだ私はどうしたか。
なんと、書かれている約束を守るどころか、積極的に破りにいった。
母にとってはまったくの予想外だったと思う。

その日を境に、本格的に処活に勤しむこととなったのだ。

メンヘラ卵、孵化のはじまり。

クラスメイトより早めに買ってもらっていた携帯電話を使い、ショートメールで適当な番号にメールを送りまくった。
そこでやりとりした大人達と待ち合わせては(塾に行くと嘘をつき)ドライブに行ったり、際どい写真を送りあったりしていた。
相手はみな20〜40代だったと思う。事件に発展してもおかしくなかった。

学校内でも手当たり次第、処活をして、適当な生徒たちと1週間付き合っては別れるということを繰り返してた。

なのに結局スムーズにいかず、喪失に至らないまま15歳。
焦りは募り、彼氏になったばかりの同級生男子の家にコンドームを持って押しかけ、服を脱ぎ、めぐりめぐってそれが自分の母親までバレるという事態に発展する。

その頃、別の同級生男子が私につけたアダ名は「ガバ子」だった。
性器がガバガバだからという意味だった(処女だったが)。


当時は、自分がなぜそんなことをするのか無自覚だった。
だけど今だからこそ認められる。

手紙を見たあの瞬間、14歳の私は直感的に「これと正反対のことをしたら、母の気を引ける」と感じたのだと思う。

幼い頃からとんでもなく厳しい詰め込み教育を受けてきた。新生児期から家では頭脳開発系テープが流れ、1歳後半から公文に通い、幼稚園には毎朝何十枚ものプリントを終わらせないと行けなかった。年中で中3までの数学過程が完了し表彰され、年長で英検3級も取った。
(しかしこの集中力は母への畏れによってのみ発動するので、母から離れた私の人生や学歴に寄与しなかった。残念)

それでも母にはほめられなかった。

小5のときスピーチコンテストの代表に選ばれた時も、私が書いたスピーチ原稿を読んだ母は「嘘ばっかり書いて」と言い放った。何をしてもダメだった。
2個下の妹は(私など比べ物にならないほど表彰され続け)神童ばりに頭がいいし、5個下の妹は愛嬌があって母のお気に入りだった。

愛されたかった。わかりやすく。
その最後の手段が「母が一番守ってほしい約束を破る」ことだったんだと思う。
30代の今になってやっと冷静に、その愚行の原動力がわかる。

高校に入ってすぐ、好きでもない童貞の先輩と付き合い、無事に処女を喪失し、わかりやすくあらゆる場所でやりまくり、目撃されまくり、その噂が中学の同級生にも知れ渡り、結果またしても母にバレたり、母から見える位置にコンドームや妊娠検査薬を置いたり、ホステスのバイトをして名刺やドレスを見えるところに置いたりしたのも全部、全部「こっち見て」の裏返しだった。

だけど言うまでもなく、母はこっちを見てくれるどころか、より一層私を軽蔑し、関係は最悪になり、たまに話せても敬語。そうして大学生になった私は「こっち見て」を恋人達にぶつけ散らしたのだった。

メンヘラ全盛期の幕開けである。
手首に傷をつけても、一日何回性行為をしても、満たされなかった。どうしていいかわからなかった。
ただ幸せになりたくて、誰かの特別になることで、まとわりつく不安に打ち勝ちたいだけなのに。何から手をつけていいかわからなかった。
何をしても不幸な気がして「もうこの人生はハズレなんだろうな」とも感じ始めてた。

何に悩んでるかもわからないまま常に悩んでた。
恋人にどれだけ好きと言われても、好きと言われていない瞬間、死にたくなった。

なぜ自分が「メンヘラ」と呼ばれるような行動をしているのかまったくわからなかった。
その答えが「母に愛されたい」だとは、思いもしなかった。

私の本音とは?

当時からなんとなく「母に愛されたい」という願望だけは自覚していた。
ただ、それと同時に「母に近づくのは難しい」と諦めていた。

なぜかというと単純に母が恐ろしすぎて。
根はとても優しく愛情深い人なのだけど、あまりに気難しく頑固だった。

母の喜びそうな条件を持つ彼氏ができ、意を決して「今○○な人と付き合ってて」と声をかけても無視された。
地元での就職を望む母に、上京の相談をしても流された。

母の望む娘像とかけ離れていく私は、拒絶され続けた。まあ私の愚行のせいなのだけど。
つまり私の「愛されたい」は無謀で、永久的に諦めるしかなかった。

だけど。今こうしてはじめて過去の出来事を文章にしてみて、溢れてくるのは、それでもなお自分に流れていると自覚せざるを得ない、甘えの源泉のような本音だった。


私の本音

母との関係をやり直したい。

欲を言えば手紙を受け取ったあの瞬間に戻り、「お母さん、私のことを想ってくれてありがとう」とまず感謝を告げたい。

あの日からちゃんと約束を守って、純情な恋愛を重ねて、そのたびに母に恋愛相談のようなものをしてみたい。

服を交換したり、友達みたいな親子になりたい。

私はただ、愛をカジュアルに交換し合いたかった
今更そんな願いが叶わないことはわかっている。

だけど……、そんな「やり直し」に似たことをするチャンスは、何度もあった気がする。
いや、まだある。

特にこの4年間、私は名古屋の実家で母と一緒に暮らしてきた。
だけどちょうど来週末には、また私は実家を出て、川崎に引っ越してしまう。
ケリをつけるならまさに今しかないのでは?と思いながらこの文章をここまで綴ってる現在である。

タイムリミットは10日後の引越し日。それまでに、せめて謝りたい。
あのとき私を思ってくれたのに、裏切り続けてごめんなさいということを。

私はどうしたか
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メンヘラ・ハッピー・ホーム

スイスイ

“メンヘラ”とは、もともと「心の病を患った人」を指すネットスラングです。でも今ではすっかりカジュアルに偏在しつつある“メンヘラ”。その樹海から脱け出したスイスイさんが、我が身を振り返りながら、今さら聞けないメンヘラの基礎の基礎、そして...もっと読む

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コメント

idealstream “母の気を引きたかった” そのために自傷行為を行った。 amazarashiの世界だ > 8日前 replyretweetfavorite

tiara_007 |スイスイ @suisuiayaka |メンヘラ・ハッピー・ホーム 通勤電車で読むものではなかった(泣いた) https://t.co/uJ1c6BH33l 8日前 replyretweetfavorite

bla3kenamel2 メンヘラ・ハッピー・ホーム、いつの間にか再開&書籍化してたのか https://t.co/UuvkqqKWo0 22日前 replyretweetfavorite

javachange 自分の中にある想いや出来事を善し悪しで判断せず、そのまま感じることが”しなやかに生きやすい”になっていくんだろうな。 https://t.co/HjZxXYc2vU 29日前 replyretweetfavorite