あり得ないと思う。
ラ・フランセパリスが日本で一番低評価なの。食べログの口コミは今でも信じているけれど、ラブホの口コミは信じることができなくなった。
新宿・歌舞伎町の奥の方に、日本で一番評価の低いラブホがある。「ラ・フランセパリス」という名前で、外観は白くて、「清潔第一!」って書いてある蛍光緑の看板だけがやけに目立った、ただボロそうなラブホ。だから一歩足を踏み入れるまで、世界が一瞬にして変わるほどの中身だなんて、想像できるわけもなかったの。
ある日、YouTubeを見ていると、「日本一低評価のラブホに行ってみた」という企画にラ・フランセパリスが取り上げられていた。その時初めて、ラ・フランセパリスが日本で一番評価が低いラブホだってことを知った。
私の大好きなラブホなのに。
どうしたら、そう思えるのだろうか。確かに、お風呂もボロボロだし、テレビは古いボックステレビだし、破れた壁がガムテープで補強されていたりする。だけど、どうして気が付かないのだろう。ここにはそんなことなんてどうでもよくなるくらい、バブルの夢が詰まってる。数ある欠点も、かえって全部、魔法の一部に見えてしまうくらい、とびきり輝く夢が。
きれいでピカピカだったらいいのか。たくさんアメニティがあったらいいのか。ベッドがふかふかだったらいいのか。お風呂が光っていたらいいのか。最新式のVODがあったらいいのか。カラオケがあったらいいのか。おいしいご飯が頼めたらいいのか。
でもそういうラブホだったら、今時たくさんある。デザイナーズホテルを謳うだけあって清潔感がある部屋。それに、誰でも楽しめる映画やカラオケ・ゲームみたいな設備が整っていて、化粧水の種類が無駄に豊富にあるようなホテル。
私はもちろん、そういうラブホも好きだ。ディズニーランドのように、誰が言って行っても自動的に楽しめるように工夫が凝らされた、キラキラなお城みたいなラブホ。
だけど、そんなラブホたちにはないもの、ラ・フランセパリスだけのもの、たくさんある。それってもしかして私だけにしか見えていないわけ? これからあなたたちにも見えるようにしてあげるわ。低価格、低評価、そんなものに惑わされず真っ白な心で感じてほしい。
タブラ・ラサ、大事よ。
ラブホ街を散歩して、部屋のパネルを見て回っていると、ここに入りたい!と心躍る瞬間がある。そして、去年の末にそうときめいて足を踏み入れたところが、ここなのだ。そのときめいた日からすでにもう、5回も行っている。
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