田の神さあはなぜこんなにかわいいのか「下手に神宿る」

ヘンな形の目利きにして脱力系エッセイの名手が、丸4年かけて日本各地の路傍から超弩級のゆるカワ神仏323体をスカウトした『ニッポン脱力神さま図鑑』。コロナのせいで出版延期となるも、5月27日にようやく発売! それを祝って、 ゆかいな神さまたちが毎日交代でお出ましくださっていますが、日曜日はお休み。代わりに、脱力神さまのかわいさの秘密に迫ります。今回は「田の神さあ編」です。

下手に神宿る

 私が初めて田の神さあを見たのは、もうずいぶん昔のことで、えびの市を観光した際、面白い石像があると聞き、市役所で地図をもらって回ったのだった。

 そうして最初に見つけたのが、哀愁たのかんである。漫画かと思った。石に悲しげな顔が描いてあり、小屋を掛けられて大事に守られていたが、悪いけどこんなのオレでも描けるぞ、と 思った。

 次に見たのが、観光パンフレットにもよく登場する人気ナンバーワンたのかんで、赤と白の派手な彩色が施され、やはり大事に小屋掛けされていたが、やはりほとんど技術のいらない感じの出来具合で、このふたつを見た段階で、これはいいものを知ったと早くも虜になったのだった。

真剣に作られたヘンテコは心に響く

 世にヘタウマと評される絵や像はいろいろあって、私はそういうものが大好物なのだが、それを好きかどうか判断をするとき、絶対譲れない基準がある。それは真剣であるかどうかというこ とだ。

 見るものを和ませようとして作ったのではない、まして笑わせようとして作ったのでは決してない、ちゃんと真面目な動機があって、真剣に作られたものであること。それが絶対条件である。そのうえで、もし作り手に高い技術があればこうはならなかったであろう表現が発現しているとき、私は強く惹かれてしまう。

 だから今出来のいかにもほっこりとしたニコニコ顔のお地蔵さんなど見ると、いかにもこういうので心和みますよねという作為が透けて見えて、そんなもんで癒されるかあ!と蹴飛ばしたくなるのだが、それと比べて田の神さあは真剣に下手であるのが気に入った。下手だからこそ止むに止まれぬ願いのようなものが籠もっているのが感じられ、かえってそのヘンテコ具合が心に響くのだった。

 今回あらためて田の神さあを見て回ると、いろんなタイプがあることを知った。むしろ石ころに顔を描いただけみたいな田の神は珍しいようだ。おかげで最初に見た田の神(哀愁たのかん)の好感度はますます高まった。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

こんな姿の神仏もありなのか! 超弩級のゆるカワ323体が史上空前の大集結

この連載について

初回を読む
ニッポン脱力神さま図鑑』の今日の神さま

宮田珠己

こんな姿の神仏もありなのか! ヘンな形の目利きにして脱力系エッセイの名手・宮田珠己が、構想・取材に丸4年をつぎ込み、日本各地の路傍から超弩級のゆるカワ神仏323体をスカウトした『ニッポン脱力神さま図鑑』。コロナのせいで延期となる...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

tanikatsu1 cakesで、南九州のあちこちに鎮座ましておられる「たのかんさあ」について書かれています。 https://t.co/jM0nTujOkK コロナが落ち着いたら、たのかんさあ詣でで南九州に来てくれる人が増えるといいなあ。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

tsutsuuryaurya1 たのかんさあがかわいいのはなぜ?「下手に神宿る」 詳しくはcakes連載で! 著者宮田珠己さんのラジオ出演情報も! https://t.co/ai7Ft1gBDD #ニッポン脱力神さま図鑑 #田の神さあ #田の神 #鹿児島#宮崎 #えびの 5ヶ月前 replyretweetfavorite