若者のモラルが低下している!」というワイドショーの嘘を暴く

声の大きな人の悪意ある言葉に傷つき、流されない! 慶應社会人ビジネススクールの人気講師が言葉の暴力に立ち向かう方法を解説する『屁理屈に負けない! 悪意ある言葉から身を守る方法』(5/29発売)。16種類の屁理屈のテクニックと対処法が記された本書の中から、ワイドショーでも頻繁に使用される「チェリーピッキング」&「軽率な一般化」という屁理屈の基本的な手法を紹介。

現在、コロナ第二波が懸念されていますが、その感染者の多くが20代の若者であるため、「これだから今時の若いやつらは自己中心的でけしからん!」と憤る声も聞こえてきます。しかし、本当に「今」の若者がけしからんのでしょうか? 今回はワイドショーなどでしばしば目にする「若者のモラルが低下している!」「若者が凶悪化している!」という論調がいかに屁理屈にまみれた嘘であるかを暴いていきます。

本題に行く前に、ようやくプロ野球も開幕したので、ひとつたとえ話をしましょう。どんな分野にも「自称評論家」はいます。もちろんプロ野球にも。インターネットではこんな意見をしばしば目にします。

「あそこでNを代打に出すのは明らかに采配ミス。単に監督が好きな選手だから出してるだけで、結局三振して流れを止めた」

さて、この「采配ミス」という結論(答え)は正しいのでしょうか?

もちろん結果(三振)だけ見れば、この結論は正しいようにも思えます。しかし、それは結果論であって、監督がその場面でN選手を代打に出す意図、つまりロジックがなかったかと考えると、「采配ミス」という結論はやはり早計な推論と言わざるを得ません。

にもかかわらず、自称評論家の彼は、なぜそのような推論を述べるに至ったのか。そこには当然、代打成功率が低かったり、前回の打席で三振していたりと、根拠となる「過去の複数の情報」があったと考えられます。

ある前提条件に則って答えを導き出す思考法を演繹法と呼ぶのに対し、複数の情報をもとに「これらのことから○○と言えるのではないか?」という推論を導き出すのが帰納法と呼ばれる思考法です。

前回の打席内容などから帰納的に「……ということは」と考えれば、「采配ミス」という結論になるのも一理ある。しかしこの意見には、こんなコメントがつくこともあります。

「前々回の代打では、起死回生のツーラン打ったじゃん。忘れたの?」

「まだゲーム序盤ということを考えれば、ここは切り札のMじゃなくてNでしょ」

このふたつのコメントに共通している点がおわかりになりますか? それは、どちらも「考慮すべき情報が欠けていると指摘している」という点です。

帰納法によって屁理屈が生まれてしまう原因、それはひとえに「サンプリング」、つまり使用した情報の「選び方」にあります。

私たちは日常的に、複数の情報から「これらのことから何が言えるか?」と帰納的に答えを導き出しています。しかし当たり前ですが、世の中のすべての情報を知っているわけではありませんから、自分の「知っている情報」から考えるしかありません。

すると、先のケースのように「Nが前々回、代打ホームランを打っている」ことを知らなかったり、または忘れていると、他人から「誤った情報から導き出された誤った推論」、この場合は「ただの結果論」として屁理屈認定されてしまうわけです。

このように見落とした情報(サンプル不足)や偏った情報によって、間違った答えを導き出してしまうことを「軽率な一般化」と呼びます。

この情報の偏りによる軽率な一般化という屁理屈の仕組みを知ってもらったところで、本題の若者論です。

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屁理屈に負けない!言葉の暴力に立ち向かう

桑畑 幸博

SNSでの誹謗中傷、職場のパワハラ、セクハラ、家庭のモラハラ、ワイドショーの扇動的なコメント……現代社会に蔓延する声の大きな人の悪意ある言葉。しかし、そのほとんどは「聞く価値のない屁理屈」に過ぎない! 慶應社会人ビジネススクールの人気...もっと読む

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