営業は1日3時間。旨さに隙のない正しい定食【おにぎり】Teishoku美松

地元民から愛される絶品メニューがある。キャベツがぱりっと新鮮。漬け物はできる限り自家製。安い。女ひとりもOK。5条件を満たす定食屋を『東京の台所』の著者・大平一枝(おおだいらかずえ)が訪ね歩く。儲けはあるのか? 激安チェーン店が席巻するなか、なぜ地価の高い都会で頑張るのか? 絶滅危惧寸前の過酷な飲食業態、定食屋店主の踏ん張る心の内と支える客の物語。変化を遂げる街・池袋で営む定食屋を紹介する。

池袋駅西口C4出口から徒歩3分ながら、静かな路地に佇む

 池袋で米屋や八百屋を営む家系に育ち、33年前、実家の土地に定食中心のごはん屋を開店。とりわけ米と魚の旨さには定評があり、2017年に開いた支店の美松はなれも含め、つねに満席だった。

 本店では、昼休憩をはさみ21時まで営業をしていたが、店主の田村久雄さんは思うところあり、徐々に夜の営業日を減らし、とうとう今年2月22日、本店を閉めて2店を統合。「Teishoku美松」として、水曜以外昼3時間のみの営業にしてしまった。2店を統合したにもかかわらず、席数も18から11に減らしたとは、ずいぶん思いきったシフトチェンジだ。

おむすびは単品でテイクアウトもできる

 池袋で生まれ育った田村さんは、こう語る。
「時代の流れもありますが、自分自身が集客型ではなく、質重視にこだわりたくなりました。定食屋はいちばんこの街から消えていった業態。できる限り続けたいと考えるなかで、本当にいい日本の普通のごはんを街場の、路地を一本入った静かなところでやりたい。新しいかたちがあってもいいなと思ったのです」

 たしかに新しいタイプの定食屋だ。
 二面の開口部から明るい日差しが入り、白い漆喰の天井には千社札、壁には店主の綴った書やお子さんが幼いときに描いた絵、古今東西出自の異なる骨董のオブジェがディスプレイされている。焼き物作家の古い茶碗やアフリカの古い人形が隣り合わせる。和風とか民芸調と一言でくくれない。いうなれば“美松風”のオリジナル空間だ。

古道具坂田の骨董や店主の書、各国の民芸をディスプレイ


 営業は水曜以外、11時半から14時半のみ。水曜は17時15分から20時まで開いている。夜もメニューは昼と変わらず、カウンターだけでテーブル席はない。

 空間、営業スタイルだけでなく定食の考え方も斬新で、一汁一菜がベースにある。人気のおむすびセットは味噌汁、小鉢、おしんこにおむすび1個だと850円。2個だと1000円。具は12種から選べる。


おむすびセット。1000円。具はあさりと鮭

 なにが新しいかと思われる向きもあろうが、お新香ひとつ、おむすびひとつがびっくりするほどおいしい。すみずみまで旨さに隙がなく、一汁一菜に勝負をかけていることが、じんじん伝わってくる。主役以上に地味な脇をしっかり固めて手を抜かないというスタイルは、定食屋では異彩を放つ。


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台所の数だけ、人生がある。お勝手から見えてきた、50人の食と日常をめぐる物語。

東京の台所

大平 一枝
平凡社
2015-03-20

この連載について

初回を読む
そこに定食屋があるかぎり。

大平一枝

絶滅危惧種ともいわれながら、今もなおも人々の心と胃袋をつかみ、満たしてくれる「定食屋」。安価でボリュームがあり、おいしく栄養があって…。そこに定食屋があるかぎり、人は店を目指し、ご飯をほおばる。家庭の味とは一線を画したクオリティーに、...もっと読む

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コメント

yoshinon これは、美味しそうな! 28日前 replyretweetfavorite

soramame_tette ちょっとこれまでと違う感じの店だけど、おいしそう。そして場所的にここなら行けそう。→ 約1ヶ月前 replyretweetfavorite