鈴木圭介
なで肩男子の巻
バンドマンなのに革ジャンが似合わない、ロックバンドのボーカリストなのに肩書以外過剰なところがひとつもない……カッコつけてると思われたくなくてカッコつけられない! 自意識と憧れの狭間で叫ぶ! 2020年5月下旬発売、ロックバンド・フラワーカンパニーズ鈴木圭介の自意識爆発エッセイ集『深夜ポンコツ』から傑作コラムを特別公開!「たとえ今が冬だったとしても、季節は巡る。春はまた来るのだ!」
なで肩。それは、男として致命傷である。肩幅は男のしるし。それがなでているんである。ダメだ。その時点で負けだ。男として。
本当は、俺も革ジャンとか着たかった。Wの革ジャンに、スリムのジーパン。靴はもちろんドクターマーチン。首にはチェーンのネックレス。髪の毛は金髪でスパイキーヘア。そう、いわゆるパンク・ファッション。したかった。本当は、俺も……。
でも無理なの。だって、なで肩だもの。パンク・ファッションに一番欠かせないWの革ジャンが、何度着ても決まらないの。若い頃、何度も試着したの。でも、一度も決まったためしはなかったの。革ジャンを着ているというより、革ジャンに着られているの。完全に負けているの。Wの革ジャンに。七五三。もしくは初めてのスーツ。そこに初々しさはあっても、荒々しさがないの。新入社員なら、それでもいいかもね。でも、私がなりたかったのは、パンクス。パンクスが初々しくて、どうするの?なめられるだけ。なめられたくないがためにパンク・ファッションをするのに。昨日なりたてです!なんてパンクスは、完全に失格よ。パンクスは、生まれた時からパンクっていう顔をしてこそなの。
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発売中!フラワーカンパニーズ鈴木圭介の『深夜ポンコツ』
この連載について
鈴木圭介
バンドマンなのに革ジャンが似合わない、ロックバンドのボーカリストなのに肩書以外過剰なところがひとつもない……カッコつけてると思われたくなくてカッコつけられない! 自意識と憧れの狭間で叫ぶ! 2020年5月下旬発売、ロックバンド・フラワ...もっと読む
著者プロフィール
ロックバンド、フラワーカンパニーズのボーカル。1969年4月30日札幌生まれ、名古屋育ち。1989年、フラワーカンパニーズを結成。全国を機材車で駆け巡り、年間100本近いライブ活動を展開。楽曲「深夜高速」が多数のミュージシャンにカヴァーされ話題に。著書に『三十代の爆走』、『イッツオンリーロッキュンロール―鈴木圭介全歌詞集』、フラワーカンパニーズ『消えぞこない 〜メンバーチェンジなし! 活動休止なし! ヒット曲なし! のバンドが結成26年で日本武道館ワンマンライブにたどりつく話〜』がある。