宿題を嫌がり泣きわめく長女—宿題の前にやるべきこととは

突然の離婚により、娘ふたりを育てることになった女装が趣味の小説家。「シングルファーザー」になってみると、彼にはこれまで想像もしなかったことが待ち受けていた……。今回は、小学校の宿題をなかなかやってこない長女と向きあった1年間を仙田さんが振り返ります。

宿題をやりたがらない長女

去年の4月から小学生になった長女にとって、大きな課題になったのは学校の宿題だった。
正確には、長女のというより、私の課題だろう。


長女(7)が作ったキャラクター。みんなからは「ルール」と呼ばれてるけどほんとは「ルー破」ってこと?

この間まで保育園児だった子どもが、小学校にあがった瞬間に自ら宿題をやり始めるわけはない。
宿題をする習慣がつくまでは親がサポートをする必要がある。
頭ではわかっているのだが、宿題をやるのを毎日嫌がる長女を毎日机に向かわせるのは、想像以上に手のかかることだった。
その意味では、オムツが外れ、自分でお尻を拭けたり、髪や体を洗えたりと、保育園時代と比べると身の回りのことは圧倒的にできるようになったが、それらとは別の種類の手のかかることができたといえる。

1年生になって最初の頃の宿題は、ひらがなを1日1文字ずつ練習するのと、繰り上がりのない足し算引き算を口頭でする計算カードと、国語の教科書を2~3ページ読む音読だった。

学校が終わるのが13時半から15時頃だが、その後には学童保育に通わせることにしたので、宿題は学童で済ませてくるという約束をした。

初めのうちは物珍しさもあったのか楽しそうにやっていたが、そのうち飽きてきたらしく、ほとんどやってこなくなった。

自己主張せず、友達にやたら物をあげる

訳を聞くと、「友達もやってなかったから」「友達に『やらんでいい』って言われたから」など、周りに流されてのことが多いようだ。
長女は争いごとを好まない性格で、たとえば友達と2人で遊んでいるときに、友達がAという遊びをしたいと言えば、自分がBという遊びをしたくても譲ってAをやる。
そんなときに、「Bやりたいねん! Bやろうや」と主張する子どももいるだろうが、長女は自己主張すると「友達が悲しい気持ちになるかもしれないから」と、自分の思いをひっこめてしまうのだ。

やたらと友達に物をあげる癖もあった。
旅行のお土産に買ったものや、クリスマスや誕生日にもらったものでも、惜しげもなくあげてしまう。
もしかすると、本当はやりたくない遊びをやったり、あげたくないものをあげたりしなければ仲間に入れてもらえないと思っているんじゃないか……。

平和的で優しい反面、裏を返せば自己主張せずに我慢することが多い。

そんな長女の性格が気になった私は、担任の先生に相談するうちに、学校のスクールカウンセラーさんを紹介された。

2人でスクールカウンセラーさんのところに通った日々

週にいちど、1時間ほどの面談をして、その週の長女の様子で気になったことを話しあう。
普段なら見過ごしてしまうような些細なことも、いちいち立ち止まってスマホにメモっておき、先生に相談した。

スクールカウンセラーさんのところで長女が描いた絵

長女との会話を通して知ることのできた、学校や学童での友達付きあいのことが多かったが、両親の離婚と引っ越しという急激な環境の変化がもたらす影響についての相談もたくさんした。
こんな出来事があって、長女はこう反応したとか、こんな会話をしたけれど、そのとき長女はどんな気持ちだったんだろうとか、長女の言動をテーブルにあげて顕微鏡で眺めるようにして見つめ続けた。
やがて私のなかで、長女がこうきたときにはこう考えよう、接しようという態度が固まってきた。

それまでは、これでいいんだろうか、もっと長女のためになる接し方があるんじゃないだろうか、と迷うことが多かったのだが、そうした迷いが少しずつ減っていったのだ。

長女も、私とは別に毎週1時間スクールカウンセラーさんに会いにいっていた。
まだ1年生なので、話をするというよりは一緒に折り紙やお絵かき、トランプなどをして遊んで過ごす。
最初のうちは緊張してほとんど喋らず、ずっと手汗をズボンで拭いていたらしいが、半年ほどする頃には先生を下の名前で呼んで懐くようになり、「次〇〇先生に会えるのいつ?」と聞いてくるようになった。

長女の苦しさに向きあう

先生によると、長女はさまざまな感情を抱いているにもかかわらず、それを他人に伝わるような形で外にだすことが苦手で、それゆえに誤解されやすかったり我慢することが多かったりして、ストレスが溜まっているとのことだった。

たしかに、京都に引っ越していらい、長女は月に1度くらいの頻度で、赤ちゃん返りしたかのように1時間ほども転げまわって泣きわめくことがあり、そのたびに私は泣き止むまで抱っこして途方に暮れた。
それは長女にとって感情をうまく外にだせていなくて苦しいというサインだったのかもしれない。
そう気がついてハッとした。

そして、性格なのか環境のせいなのかはわからないが、長女がそういう苦しさを抱えているのなら、とことん向きあおう。
私はそう決めた。

宿題の件からはずいぶんかけ離れてしまったが、こうした本質的な問題の前では勉強や宿題のことなどたいして重要ではないと思えた。
先生と一緒に折り紙やお絵かきをしたり、話をしたりするなかで、少しずつ自分を表現すること、それらを受け容れてくれる大人がいるのだと知ること。
長女にはまずそれを優先させてあげたかった。

1年間その先生にはお世話になり、その途中では宿題のことだけでなく、友達との関係や、母親(私の元妻)との関係などにおける、さまざまなことを相談した。
そのなかで多くの気づきを得て長女との関り方を変えることができたし、長女自身、苦しめられていたものから解放されていったように思えた。

2年生になったいまでは泣きわめくことはなくなったし、友達と一緒にいるときにも自分のしたいことを言えているようだ。

相変わらず宿題をやりたがらない長女

話を宿題に戻そう。
1年生の2学期あたりから、長女は学童で宿題を全くやってこなくなった。
話しあった結果、家に帰ってからやることに決めたのだが、私が仕事を終えて迎えに行き、帰ると6時頃になっている。

ご飯を作って食べさせて、お風呂に入れて洗濯物を取りこんで畳んでと、いちばん忙しい時間帯だ。
わからないから教えてと寄ってこられても、まともに相手をできないことが多い。
そのうち落書きをしたりマンガを読んだりして遊びだし、1時間経っても計算問題1問しかできていないときもあった。

私がイライラして「早くやりなさい」と言うと嫌々机に向かうが、イライラが伝染するのか、絶対わかっているはずの問題をわざと間違えて「これでいい?」と見せにきたり、「直しなさい」というと消しゴムを乱暴に使ってプリントをビリビリにしたり。

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女装パパが「ママ」をしながら、家族と愛と性について考えてみた。

仙田学

突然の離婚により、娘ふたりを育てることになった女装趣味の小説家。「シングルファーザー」になってみると、彼にはこれまで想像もしなかったことが待ち受けていた。仕事と家事・育児に追われる日々、保育園や学校・ママ友との付き合い、尽きることのな...もっと読む

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