まんざらでもない表情
家にこもる生活が続いたこともあって、ここ数ヶ月は遭遇していないが、夜遅くに電車に乗ると、酒に酔ったサラリーマンが、その場にいる一番偉い人の機嫌を思いっきり持ち上げていたりする。その時の、偉い人のまんざらでもない表情を眺めるのが好きだ。「ホントに(〇〇部長の下で)良かったっす!」や「色々感謝しています!」といった具体性に欠ける「おべんちゃら」にも、素直に「ったく、何言ってんだよ」と照れている。無表情の私は心の中で「何言ってんだよ、って、ほとんど何も言ってないよ」なんて思う。部下が次々と降りていく中で、最後まで部長が車内に残る。おそらく一軒家に住んでいるであろう偉い人が都心から最も住まいが遠くなるというリアルな住宅実情を感知し、心の中にわずかな同情を芽生えさせながら、こちらも先に電車を降りる。
「おべんちゃら」を投じるのがとても苦手で、なぜ苦手かと自己分析すると、投じた相手の反応より、投じている様子を他人に見られることに耐えられないからだと思う。「マジ、〇〇さんの仕事って、アップデートの連続っすよね!」という適当なおべんちゃらがあったとして、それを気持ちよく受け止める人よりも、周囲の人から「あいつ、あんなこと言って気に入られようとしている」と見られてしまうのが嫌なのだ。おべんちゃらを投げる効果が「+10ポイント」だったとしても、おべんちゃらを見られる恥ずかしさが「-5ポイント」だったとしたら、自分はそっちの「-5ポイント」を気にする。会社生活を生き抜いたことがないのでわからないが、「-5ポイント」を気にせずに「+10ポイント」を投じまくった結果、すっかり同僚や部下からの信頼を得られなくなった人って、たくさんいるんじゃないかと思う。
河井克行「安倍総理こそノーベル平和賞だ」
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