ある時から、息子を嘘つき呼ばわりするようになった夫
少し前から息子が、何か不満なことがあるとすぐに「痛い!痛い!救急車を呼んでぇえええ!」と叫ぶようになった。
当初、本当に痛いのかと思って「どこが痛いの?!ここ?ここ?!どうしたんだろう、成長痛かなぁ?!」などと痛いところを探してはさすったりしていたのだけど、ある日夫が「あの救急車のくだりの元ネタが分かった」と言い出して、どうやらそれは、とあるアニメに出てくる嘘つきオオカミというキャラクターのモノマネだということが発覚した。
夫に言われてから私もその動画を確認したところ、嘘つきオオカミが出てきて「痛い痛い」と騒いだ後に救急車が駆けつけるという一連のくだりがあって、それはまさに息子の痛がり方にそっくりだった。 実際にその後、息子が騒いだ際に動画同様のテンションで「はい!こちらモンスター救急車です!」と言って駆けつけたところ、痛いところを探すよりも遥かに早く立ち直ったために「求めていたのはコレだったのか」「てか、めっちゃ演技派じゃん」と、アニメも意外と勉強になるんだなぁ(観ているだけで、しっかりと痛がる小芝居と救急車を呼ぶという概念を習得したなんてスゴいなぁ)と感心していたのだけど、夫は違う反応をしていて、ある時から、息子を嘘つき呼ばわりするようになった。
「痛い、痛い、痛いよおおお!救急車呼んでえええ!」と言う息子に対して、「痛くないでしょ」と言い、「どうせウソなんだから、これがクセになると困るから、美咲ちゃんも今後はこのくだりには反応しないで。本当に痛いわけじゃないんだから、放っておけばいいんだよ」と言うのだ。
この件に関して、私は全力で食い下がり、息子ではなく夫のことを叱ったのだけど、これは育児論とかを越えて、ただの人間として、万人にとって大切な話だと感じたので、皆さまにも共有したいと思い、私はこの記事を書くことにした。
息子の言葉を言い換えると…
まず、私は夫にこう言った。 「いや、そもそも、これはウソとかじゃないから!!」と。
息子の例は、かなり極端だけど(つまり例題として最高に分かりやすい!)、こういうことは世の中全体のそこら中で起こっていて、思春期の親子でもそうだし、恋人同士でもそう、もはや会社内でもそうで、あらゆる大人同士の間でもめっちゃ起こっているように思う。
だから、全ての人に「自分ごとだ」と思って、よく聞いてほしいのだけど。
息子がいう「痛い痛い!救急車呼んでえええ!」は、言い換えると「構ってえええ!」「遊んでえええ!」「ねえ、こっち来てえええ!」「もっと注目してえええ!」ということだ。また、時と場合によっては「それはイヤ!」「この遊びつまらない、他のことしたい!」などのメッセージが込められている場合もある。
要約すると、息子は、私たちに駆けつけてほしい時・構ってほしい時・何かに気付いてほしい時などに、よくその台詞を使う。最初はモノマネから始まっていたが、それを言うとパパとママが駆けつけてくれるという仕組みを理解したことによって「ねえ、ちょっとこっち来てよ、俺に注目してよ」とか「俺の言いたいことを汲み取ってくれよ」ということを伝える語彙として、フル活用しはじめた。
「痛い痛い!」に関してもそうで、痛いわけではないにしろ、何らかの不快感や苦痛などがあるときにSOSを出す意味で言っていることが多く、ぜんぜんウソとかではない。まだ語彙が少ないから、言葉のチョイスが日本語として適切じゃないだけで、明らかに、こちらに用事があって声を出しているし、その一言にはいろいろな意味が詰まっている。無意味なウソではない。
本当に痛いパターンもある
そもそも、痛い可能性だってある。息子は年齢のわりにかなり背が高い方の幼児で、背が伸びまくっているので、こんな急成長していたら年がら年中成長痛に苦しんでいたって何も不思議ではないし、むしろ無痛である方が信じがたい。実際、本当に痛いパターンもあり、足をもんであげると満たされていることもよくある。(もしくは、そのことで構ってほしい気持ちが満たされたのかもしれない)
私は夫に「ウソつき扱いをして無視をするなんて親として絶対にありえない。ダメだから、やめて。この子の言葉のチョイスに問題があると言うのなら、正しいセリフをその都度、教えてあげて。親ならそうするべきでしょ」と伝えた。
「そういう時はイタイイタイじゃなくて、○○って言うんだよって。救急車を呼んでじゃなくて、パパこっちに来てって言うんだよ」って何度だって優しく言ってあげてよ、と。
教わってないことは知らなくて当たり前だし、そんな風に繰り返し教わることで人は正しい表現を身に付けていくのだと私は思う。 子どもがズレた言葉を使うたびに嘘つき扱いをして話を終わらせてしまったら、せっかくの語彙を増やすチャンスを逃すようなものだ。
2歳児の語彙が少ないのは本人のせいじゃないし、まだまだ当面は極端に少なくて当然で、そもそも親が子どもの語彙の少なさを責めるなんてありえない。それは何歳になってもそう。適切な言葉の使い方を教えるのは、親の役目だ。
子どもがSOSを言ってくれないと困るのはこっち
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