領土問題の大きな影響
年始は北海道のルスツリゾートに、家族でスキーに行っていました。ルスツリゾートは娘が気に入ったので三年連続で利用しているのですが、今年は少し様子が違いました。
一昨年と昨年は目立った中国人・韓国人の旅行客に、まったくといっていいほど出会わなかったのです。震災や原発事故が原因であれば昨年影響が出ているはずですから、これは明らかに尖閣問題と竹島問題の結果ですね。
というわけでさっそく検索してみたところ、いろいろ興味深いことがわかりました。ルスツリゾートはそもそも、加森観光という、北海道を起点に日本各地で大規模なリゾート開発を手がけている企業によって運営されています。その加森観光が二〇〇六年に、ルスツリゾートの大規模な拡張計画を発表していたんですね。
これがかなりの大型プロジェクトで、『日本経済新聞』の報道によると予算規模は五一〇億円だったそうです。現地には拡張計画を見せる模型も展示されていて、実現したらかなりのインパクトだと思いました。しかし、中国企業からの資金借り入れを予定していたらしく、尖閣問題によって計画は棚上げになってしまった。尖閣問題が直接与えた影響としては、もっとも大きいものだそうです。
そこでさらに調べてみると、北海道のリゾート地はけっこう海外の企業によって運営されている。たとえばニセコリゾートにはオーストラリア資本が入っていますし、キロロリゾートはタイ日本の合弁企業が所有しています。
そのような状況を前提としてか、玄関口となる新千歳空港は最近大幅にリニューアルしている。国際線ターミナルを新設したうえに、ショッピングモール化された空港として生まれ変わっています。このモールも、よくある空港の専門店街というものではなく、かなり大型です。
たとえば、ドラえもんのテーマパーク「わくわくスカイパーク」やドイツの著名なテディベアメーカーシュタイフのミュージアム「ネイチャーワールド」、さらには映画館まで入っている。いずれも大型の施設で、「わくわくスカイパーク」であれば、ひみつ道具がテーマのアトラクションがあったり、子ども向けのプレイゾーンがあったりと、単独のテーマパークとしてけっこう充実してるようです。
空港利用客だけでなく、地元住民もターゲットにしたモールになっているのですが、他方日本人だけでなく外国人旅行客も視野に入れている。アニメグッズの専門店もあります。
そもそも北海道は、アジア・オセアニア圏のウィンターリゾートとして有力な地域です。とくにオーストラリアは日本とほとんど時差がなく、彼らにとってのサマーバカンスが日本のスキーシーズンにあたることもあって、毎年多くのスキーヤーが日本に来ている。
そういえば二〇一四年には安藤忠雄氏デザインのカペラ・ニセコがオープン予定ですが、告知サイトには日本語表示が用意されていない。コンドミニアムの分譲もあるらしいのですが、これも完全に外国人用でしょう。ルスツもアマンとクラブメッドを呼ぼうとしていたという情報がありました。このように北海道はグローバルマーケットを対象としたリゾートに生まれ変わろうとしているのですが、領土問題がそこに水を差したわけですね。その影響はもしかしたら原発事故より大きいかもしれない。
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