そういう場合って、幡野さん容赦しないんですよね
大熊信(以下、大熊) では次の言葉にいきます。
(編集部注:スライドの右下は連載時の記事タイトルです)
大熊 この相談を送ってきたひとは、娘がグレて学校に行かないから困っているというお母さんなんですけど、このひと以外にも、子どものことで悩んでいるひとって多い。そういうひとたちの相談文を読んでいると、文面から微妙な感じが漂っているひとが何人かいて、このお母さんもその中のひとりでしたよね。
幡野広志 (以下、幡野) そうですね。
大熊 そういう場合って、幡野さん容赦しないんですよね。
幡野 そう、自分のせいだってわからせたほうがいいよね。人生相談って基本的に相談者の味方になって背中を押したほうがいいんだろうけど、子どもへの虐待になっちゃうようなことは背中を押せないでしょ。
大熊 押せないですね。
幡野 虐待じゃないにしても、子どもの人生に大きく影響を与えるようなことは背中を押せない。悩んでいるのはお母さんだけど、その先に付随して悩んでいる子どもがいるわけじゃないですか。子どもと親、どっちを助けるかってなると、どうしても子どもをとっちゃう。だって子どものほうが人生長いから。親はもういいでしょ、って。
大熊 この場合も完全に子どものためっていう立場で回答してますよね。
幡野 そうですね。
大熊 この手の相談ってそこそこくるじゃないですか。けっこう謎なんですど、そういうひとたちってこの連載読んだうえで送っているんですかね? 読んでいれば、どう考えてもボコボコにされるってわかりそうなものなのに。なぜか文末に「幡野さんのお体も心配です」って書いてくるひとも多くて、そんなこと書いても幡野さんは容赦してくれないよ、って思う。
幡野 文末なんてまったく気にしてない。
大熊 ですよね(笑)。なんなんでしょうね。
幡野 たぶん自分を疑っていないんでしょうね。自覚していないと思います。特にお母さんと息子っていうパターンが多いんだけど、子どもの時ってママ大好きってなるでしょ? だけど大人になると他に好きなひとができる。それをたぶん認識できていなくて、子どもが自分から離れようとすると「私のこと捨てないで」っていうドロドロした感情になる。恋愛にちょっと近いんですよね。
大熊 なるほど。
幡野 毒親のひとはもれなく恋愛が下手なんだろうなと思うんですよ。上手だったら親子関係ももうちょっとうまいもん。それは毎回感じちゃうんだよね。
大熊 わかる気がします。
幡野 この相談送ってきたひとも、娘さんが18歳とかでしょ? 反抗期だと思うんだけど、結局、子どもの反抗期って13歳ぐらいからせいぜい5年間ぐらいでしょ? 子供の人生で考えたら短いよね、5年間なんて。この反抗期の接しかたを親が誤ると一生嫌いになるっていう話だよね。5年間親が我慢すればいいだけなのに、失敗しちゃうんだよね。5年間よ? 人生の中で5年間。それをやりゃあいいのになって思うの、正直。
大熊 自覚がないんですね。
幡野 子どもはずっと私のことが好きでしょって思っちゃうの。
つまんない相談文をなんで採用したんですか?
大熊 あとで似た話をしたいと思います。ひとまず次の言葉にいきます。
大熊 これ、「私の悩みは自分の人生が波乱万丈なことです」から始まる相談で、最終的に、私みたいな波乱万丈な人間は穏やかな人生を送るためにはどうしたらいいでしょうかっていう質問なんですけど、幡野さんは「あなたにいろいろ言ってくるひとたちはあなたを黙らせようとしているだけですよ」と答えるんですね。そして「なぜあなたを黙らせたいかというと...」と続くんですけど、幡野さん、ここでなんて答えたか覚えています?
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