ネットでボコボコに叩かれるんだろうなって思ってた

幡野広志さんの新刊『なんで僕に聞くんだろう。』の発売を記念しておこなったトークショーの模様を7回にわたってお届けする連載、第2回です。書籍のもととなった幡野さんのcakes連載を担当している大熊信(cakes編集長)が、幡野さんが紡いできた言葉を紹介しつつ、それにどういう意図や意味があったのかを聞いていきます。(毎週土曜日更新)

ネットでボコボコに叩かれると思っていた

大熊信(以下、大熊) では次の言葉にいきます。
(編集部注:スライドの右下は連載時の記事タイトルです)

幡野広志 (以下、幡野) あれだ、売春がやめられないっていうかただ。

大熊 結婚して心から愛してくれる旦那さんもいるんだけど、売春をしてしまうという女性からの相談です。売春をやめられないのはお金の問題じゃなくて、精神的なものなんですよね。

幡野 そうですね。このかたはけっこう大変なんじゃないかな。

大熊 幡野さん、この回答の冒頭で、「これは解決しません」って言っているんですよね。

幡野 しないと思う。難しいんじゃないかな。実際大変な状態に今も瀕していると思いますよ。ただこれ、そうだな、どこまで言おうかな。相談者の女性は1万5千円を自分の市場価値だと思ってたんだよね。売春が1万5千円ってびっくりするくらい安いと思うんだけど。

大熊 安いですね。

幡野 だから風俗店で働いたほうがいいよってアドバイスしたんですよ。そのほうがよっぽどリスク防げるし、お金も稼げるし、なにかあったらお店のひとがいるわけですから。人生相談で「風俗店で働いたら?」って答えるのもあれなんだけど。

大熊 この記事が公開されたあと、相談者の女性から実際に風俗で働きはじめましたっていう返信がありましたね。

幡野 明確にアドバイスしちゃうと、けっこうみんな現実にやっちゃうの。前回の仕事を辞めたお母さんもそうだし、夫婦関係で悩んでいるひとにぼくが離婚しちゃったほうがいいよって言ったら実際に離婚したひともいた。だから明言したくないっていうのがあるんですけど。

大熊 とはいえ、幡野さんが「風俗店でさまざまなリスクから守ってもらいつつ高く売りましょう」ってアドバイスしたのって、「ぼくのせいにしましょう」っていうのとセットなんですよね。

幡野 そうね。

大熊 これって優しいけれど、半分突き放していると思うんです。だって幡野さんのせいにしましょうって言っても、実際には幡野さんのせいにできないじゃないですか。

幡野 いや、できるんじゃないかな。ぼく、バレると思ったの、旦那さんに。

大熊 え?

幡野 風俗店で働こうが売春しようが、いずれは旦那さんにバレる。相当大変なことになるし、彼女の状況を考えると、旦那さんとの離婚が自殺の引き金になりかねないんだよね。

大熊 あー、なるほど…。

幡野 でもなんで売春なんてしたんだってなったときに、「このひとに言われて」って言ったら、旦那さんの怒りの矛先も多少変わるかなと思って。え?ってなるでしょ。夫婦喧嘩も和らぐかなってちょっと思った。

大熊 本当に幡野さんのせいにしていいよって話なんですか?

幡野 そう。リアルな話、ぼくはもう死んじゃうから、数年後にバレたところで別にいいんだよね。ぼくが健康だったら言ってなかったかもしれない。

大熊 そこまで見据えていたんですね。

幡野 生きている間に旦那さんに何か言われたらごめんなさいねぐらいは言おうと思っているけど。いやあ、しょうがないと思う、彼女の場合。売春やめなさいって言うのは簡単なんだけど。

大熊 この相談者の女性に倫理観とか感情論とかで「売春なんてダメに決まってんじゃん!」って言っても絶対通用しないんですよね。

幡野 そうでしょうね。

大熊 だから幡野さんは合理性みたいなところをひたすら言い続けた。

幡野 得なことを与えないとダメでしょう。倫理観なんて本人もわかってるでしょうしね。そこから抜け出せないから困ってるわけであって。

大熊 それがすごくいい回答でした。

幡野 公開するときネットでボコボコに叩かれるんだろうなって思ってたけど……。

大熊 ぼくもそう思っていました(笑)。

幡野 でも、出してみたらそんなに批判は来なかったですね。思いのほかみんな肯定的で優しかった。

大熊 この相談に限らず、相談者を応援するツイートや寄り添うツイートってけっこう多いですよね。

幡野 ぼくに返事をくれる相談者は、そういうツイートを読んで勇気づけられたって言うひとがめちゃくちゃ多い。

大熊 そうなんですね。

幡野 みんな言うよ、「幡野さんに答えてもらって嬉しかったけど、それと同じくらいみなさんの言葉がありがたかった」って。救われているひとが多いんだろうな。

ぼくは20代の頃に呪いの言葉をかけられていた

大熊 次の言葉にいきます。

この相談を送ってきたひとは、自信がなくて不安だから子どもを産む覚悟ができないという女性なんですけど、これ現代的というか、自己肯定感の問題だと思うんですね。

幡野 はいはい。

大熊 俺なんかだめだ、私なんかだめだって言っているひとって、他人のことも肯定できなくなってしまうという。

幡野 そうですね。最初は誰かから否定的なことを言われて落ちこんでいたひとが、今度は自分が別のひとに同じことをしちゃう。「元被害者の加害者」って言ったりするんですけど。そうなっちゃうと大変なんですよね。自分で自分の首をしめることになる。

大熊 幡野さんって自分で自己肯定感がすごい低いっておっしゃってますよね。

幡野 高いひとだと誤解されがちですけど、低いですよ。

大熊 高いとまでは思っていませんでしたけど、めちゃくちゃ低いとうのは意外で。なんで低いんですか?……っていう聞きかたもおかしいですけど(笑)。

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幡野さんはどんな気持ちで相談に答えてるんだろう

幡野広志 /大熊信

cakesの人気連載「幡野広志の、なんでぼくに聞くんだろう。」が書籍化し、ベストセラーとなっています(書籍タイトルは『なんで僕に聞くんだろう。』)。刊行直後、連載の担当編集者である大熊信(cakes編集長)と幡野さんがトークショーをお...もっと読む

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コメント

0fut0n 是非読んでほしい。 3ヶ月前 replyretweetfavorite

tokonatsusawaya 自己肯定感の高い人がウザいって話が面白かった(゚∀゚) 3ヶ月前 replyretweetfavorite

nyahoko 自己肯定感の話すごく面白かった! https://t.co/jwmHz2NBij 3ヶ月前 replyretweetfavorite

vicke_2 自己肯定感を高めるには、みたいなツイートで思い出した記事。幡野さんに「それは盲点だったかも」といわせた大熊さん。 大熊 だって学生時代から現在に至るまで、自己肯定感の高いひとと仲良くなれました? 幡野 あ、なれなかったかも。 https://t.co/hSiQt0Lqzg 3ヶ月前 replyretweetfavorite