私を殴った父が許せない。許せないなんて、私、悪者?

今回、牧村さんのもとには父親のことが大嫌いだという方からのお悩みが届きました。父親と顔を合わせるストレスや養われていることへの屈辱感でおかしくなりそうだという相談者さん。牧村さんは相談者さんの心に寄り添いながら、「金と暴力で管理しようとする人」を的確に批判していきます。

※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。/バナー写真撮影:田中舞 着物スタイリング:渡部あや

「見捨てるの?」
あなたを殴った人が言う。

「払うから」
あなたにお金を差し出して。

「家族なんだよ」「許してあげなよ」
なんにも知らない人が言う。

わたし、最後まで悪者みたい。
残るは、愛か、哀れみか……。

毎週水曜朝10時、「ハッピーエンドに殺されない」。なんも知らん人らに「この道行ってこそハッピーエンドやぞ」って指図されても華麗にスルーで自分の道を行けるよう人生相談する連載です。

今回は「お金があって働かない父。送迎もお金も出してくれる、けれど……」というご相談です。ご相談くださった方は「就活も怖い。でも養われ続けるのは屈辱」とおっしゃいます。

そりゃそうだと思います。それはいわゆる「働きたくないでござる」とは違った感情。「就活」という大きなシステムに処理され、企業という組織で養われることが怖いんでしょう。だって今まで、「社会」という大きなシステムに処理されながらも「社会人でない」と主体的参加を許されず、家族という組織で養われてきたんだもの。前回記事「就活、イヤすぎ。これは現実逃避でしょうか」でも触れた話ですね。

働くのが怖いんじゃなくて、また組織に組み込まれるのが怖いのよ。

組み込まれずに、属せる場所を目指して。(あなたそこにいれば生きていけるじゃない)というやっかみ混じりの「家族を許してあげなよ❤️」を、そこに置いて、どう旅立つか。一緒に考えていきましょう。まずはご投稿をご紹介します。

まきむぅさんこんにちは。 まきむぅさんのラジオや記事、楽しく拝見しております。表面に囚われず、本質を突き詰めようと努力し、またひとりひとりを尊重なさるまきむぅさんの考え方がとても好きです。そんなまきむぅさんに、ご相談したいことがあります。 私が今回ご相談したいことは、父に対する態度についてです。

私の家は親二人子二人の四人家族です。父方の実家が裕福なこともあり、ありがたいことに生活に困ることなく暮らしています。母は働きつつ、今年から学生になりました。きょうだいも就職し、就活が怖くて逃げてしまっている私は、母の代わりに家事を手伝いながら暮らしています。

父はというと、祖父の会社の役員で、あまり仕事には行きません。

母はそんな父を毛嫌いしています。それはもう、私が思い出せる限りずっと父のことが嫌いで、私たちきょうだいは何度も何度も父の悪口を聞いて育ちました。離婚する、とたまに言う割には結局離婚はしないし、表面上仲が悪くは見えません。

私も中学生の頃には父が大嫌いになっていて、外で愚痴ることもありました。そのたびに、「お父さん送り迎えしてくれて優しいのに」「お母さんがお父さんの悪口言うせいだよ」と窘められたのですが、そのことばにも「一緒に暮らしているわけじゃないのに、何がわかるの?」と腹を立てていました。

父に問題があるのは確かです。「大人を舐めるなよ」と殴られたこともあります。許せません。父はちっとも大人らしくなんてありませんし、大切なことは何一つ教えてもらえませんでした。怒るのも、感情任せです。

最近の父は私にとても気を使っています。送り迎えをしてくれますし、お小遣いもくれます。あんまりに私が不機嫌だと怒ることがあるのですが、それも滅多にありません。

私は父を目の前にしただけで、イライラしてしまい、嫌悪感と憎しみでいっぱいになります。色々としてもらいながら、微塵も感謝の念を抱けず、むしろこの人に養われているのだと思うのが本当に屈辱で、「働かなくては、就職先を見つけなくては、そうじゃなきゃ死ぬしかない」と思ってしまいます。

母も、最近はきょうだいも、父を嫌いなせいで、父は家族の団欒から多くの場合疎外されています。それを哀れに思うと言うよりは、人を疎外している自分に対して恐ろしい気持ちになります。

私は父との関係を修復したいのですが、それは私が嫌な人間になりたくないからなんです。だから、父のことなんて少しも考えてないし、それで解決するわけがありません。

就職さえできれば、今の罪悪感からはとりあえず逃れられると思います。けれど、父との関係はその後も続くんです。父の老後のことなど私は考えたくありませんが、いずれ考えなければならないでしょう。自分の体にあの人の血が流れていること、顔が似ていること、動作がやはりときどき似ていること、全て嫌です。あの人が父親だと人に思われるのも嫌です。今私は家にずっといるので、頻繁に顔を合わせます。どうしてもつっけんどんになってしまいます。顔を合わせるストレスと、養われていることへの屈辱感、自分が加害者であることへの恐ろしさと、自己弁護してしまいそうになる偽善への嫌悪感で、おかしくなりそうです。どうしたらよいのでしょうか?

乱文長文失礼いたしました。支離滅裂かもしれません。ごめんなさい。 まきむぅさんに一緒に考えていただきたいです。よろしくお願いします。

(プライバシー保護のため、拝読の上、編集して掲載しました)


えっと。 まず手始めに、ご投稿いただいた文章の中で「父」と表現されているその方のことをですね、ここから先の文章では「お父様」とはお呼びせず、私の一存でこう呼ばせていただきますね。

「大人を舐めるなよ! と言いながら子どもを殴った大人」。

あ、長いか。 じゃ、

「子殴り大人」

と略しますね。

金で傷を隠す気?
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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

meganedesk 自分はこの父になりそうな予感がしていてとても怖い 一度も殴ってはならないし言葉で傷つけてもいけない(当たり前)、もしそれを破った場合どんな行動もどれほどのお金も代償にはなり得ない https://t.co/XzLX3yW6b9 6ヶ月前 replyretweetfavorite

tonchantonchan よく「結局は自分も相手も許さねば解放されない」と言うし私は自分… https://t.co/VIHsAuEhbe 6ヶ月前 replyretweetfavorite

0501Can @cakes_PRさんから #ハッピーエンドに殺されない @makimuuuuuu 6ヶ月前 replyretweetfavorite

_ksfa |牧村朝子 @makimuuuuuu |ハッピーエンドに殺されない 子殴り大人は大人なのかな 大人ってむずかしい https://t.co/FrbdOdTOjX 6ヶ月前 replyretweetfavorite