病人だって殴っていい

難病を抱える同僚の存在に悩む今回の相談者。「殴ってしまいそう」とまで思い詰める相談者に、難病を抱える写真家・幡野広志さんはどう答えるのでしょうか。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

難病を患っている同僚を殴ってしまいそうです。

 職場で長い間一緒に働く女性が、遺伝性の難病を発症しました。進行は遅いそうですが、かなり辛そうな病気です。完治の見込みはありません。
 私は同僚が大嫌いです。できればもう私と関わらないでほしい。
 前から同僚について思うことはありました。それを言いだすとキリが無いので省きます。
 私が苛立っているのは、発病以降の同僚の言動です。
 同僚は自分の難病について話してくれます。それは一緒に仕事をするうえで助かります。ただ正直すぎるんです。発症の経緯、主治医、予後まで教えられても困ります。それについて意見を求められるのはもっと困ります。当初、話を聞いてほしいのだと思い、相槌と同意をくりかえしていたら、「あなたの意見を言うべきだ」と怒られました。
 同僚の難病について気の毒だとは思います。でも、それ以上は何も思いません。私は彼女の友人でも家族でもありません。だから気の毒だとしか思えないし、話を聞く以外のこともしません。病気の相談は医師か、家族か、別の専門家にしてもらいたいのです。
 また、同僚は人のプライベートについても聞きたがります。憶測ですが、彼女は自分の難病について話すのだから、自分も人の病気や不幸について聞くことができる(聞くべきだ)と思っているようです。が、少なくとも私は自分の悩みについては周りの人に言いたくないのです。後出しですが、私は腕に大きなアザがあります。普段は隠しているのですが、その同僚に見つかって、治療法やケアについて他に人がいる場所で聞いてきました。当然、職場で私のアザは周知のことになりました。そのことを思い出すと、今でも涙が出ます。
 もうひとつ困ったことは、同僚が医療や健康についてアドバイスするようになったことです。ありがたいことに、ニセ医学、ホメオパシーの類ではありません。それだけでも良しとしたいのですが、難病患者といっても素人なので、言っていることはかなりいい加減です。同僚は病院で検診を受けることをしょっちゅう勧めます。私は地域の検診や職場の人間ドックを受けていますが、何度言っても主治医の言葉、自分の経験、など、根拠に乏しいわりに重たいエピソードばかり出して反論されます。最近では職場の全員にPCR検査をしてほしいと言っています。心配な気持ちはわかりますが、検診はやたら増やせばいいというものではない、ということは常識だと幡野さんもご存知だと思います。その程度の知識しかない人にずっと医学について話されてもただ苦痛なだけです。
 最近では同僚の顔を見るだけで、腹立たしい気分になります。でも面と向かっては言えないのです。言おうとすると、彼女の難病のことが思い浮かんでしまうのです。
 私はおそらく、彼女の病気を勝手に同情し、哀れんでいるのだと思います。そんなことしてはいけないと頭でわかっていますが、してしまうのです。私はどうすればいいでしょうか。

(三回跳び 28歳 女性)

あなたの最初の一文で眉間にシワを寄せたり、あなたに対して不快感をもったり怒る人もいるとおもうんですけど、ぼくはおもわず声をだして笑ってしまいました。あなたのことをバカにした意味の笑いじゃなくて、これはあるあるだよなぁーという笑いです。きっとあなたとおなじように感じている人ってけっこういるとおもいます。

ぼくはあまり怒るということはないのですが、それはいざとなれば相手を徹底的にボコボコにすればいいとおもってるからですよ。最終的にはフグを釣ってきてフグ毒や山にいってトリカブトの毒で殺しちゃえばいいやっておもってるし。

殺す手段を持っていると、殺意どころか怒りもあまりわかないんですよ。いつでも自殺する手段があると、逆に自殺をしないのとおなじことだとおもいます。

病人って孤独状態に陥ってしまう人ってけっこういるんですけど、その要因の一つが(あくまで一つですよ)病人特有のウザさにあるとおもっています。きっといま、めちゃくちゃ眉間にシワを寄せてる人いるんだろうなぁ。

孤独を感じた人は話を聞いてもらいたくて、ずっと自分の話をしてしまい、それがウザがられて周囲から人が離れていって、ちょっとでも話を聞いてくれる人を見つけると、またここぞとばかりにずっと自分の話をしてしまうという悪循環があるんです。健康保険適用させた、雑談屋さんが病院にいればいいのにね。

あなたの悩みをあるあるだよなぁって笑ったのは、ぼくですらたくさん無料雑談屋さんを経験しているからです。じつは病人のぼくがいちばん苦手意識をもっているのは病人です。

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幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

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コメント

coge1mamich 「」迫力がある https://t.co/uUXa7Uxlm2 4ヶ月前 replyretweetfavorite

MCTD2525 @nz8AMWZBeC5QqSV 幡野さんのはこの文章もいいですが、cakesで悩み相談もやっていたり本も出版されていて本当に考えさせられるので良かったらこちらもどうぞ!!https://t.co/3MfBtVqpS5 4ヶ月前 replyretweetfavorite

cf193_80thz この回、会員登録していないため全文読めていないけど 殴っててすき 4ヶ月前 replyretweetfavorite

is_Frederick 後半は有料だけど冒頭は読めるー。余命宣告を受けている写真家さん。著書の『なんで僕に聞くんだろう』は面白かった。 https://t.co/uceoWR45F8 4ヶ月前 replyretweetfavorite