蘭ちゃんへ
こんにちは!
東京も緊急事態宣言が解除され、すこしずつ外に出てみていますが、なんとなく他人に慣れず、不思議な感覚です。散歩しているいつもの道に咲く花の種類で季節の移り変わりを感じています(今はジャスミンの香りが最高潮、紫陽花も咲きはじめました)。ゆっくりでも確実に日常が戻ってきますように。
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さて、前回の蘭ちゃんのインタビューのお話、ものすごーくおもしろかった!もう15年も続けていて、「もっとやりたい」と思えるお仕事があるのは、すばらしいね。とても羨ましいです。
「羨ましい」というのは、わたしはずっと「これをしたい」と思って仕事をはじめたり続けたことがなかったからです。今年の初めに「雑談」を仕事にしようとしたのが、人生ではじめて「やりたい」と思ってやってみたことでした。
4年くらい前に「どうしてやりたいことがないんだろう」と考えはじめ、遡ると、中学2年生のときに「将来の夢」の作文が書けなかったことを思い出しました。今思うと「どんな職業があるか知らなかったから書けなかったのだ」と理解はするものの、大人になって、いろんな種類の仕事に就いている人たちは、それぞれ、いつ、どうしてその職業を知って、やろうと決めたんだろう?と、さらに疑問が増えました。
それで、目についた人たちに片っ端から「どうしてその仕事をしているの?」と聞いて回りました。そのときに聞いた話は、どれも、どれだけ図書館で調べてもインターネットで検索しても出てこない、その人だけの「たまたま」が重なった物語でした。たまたまバイト先の先輩に聞いた話がきっかけだったり、たまたま観た映画に影響されたり、たまたま読んだ記事に感化されたりと、誰にも真似できない偶然からはじまっていました。
それらのお話を聞いていて、そうか、案外みんな自分ひとりから湧き出る「これをしたい!」だけではなくて、他人に褒められたとか、たまたま出会ったとか、外からの要素が大きくて、それを「自分のものだ」と思い込んで掴むことができるかどうかなのかもしれないな、と思うようになりました。
蘭ちゃんが19歳ではじめてインタビューのお仕事をしたときに、これが自分の仕事になるだろうなと予感したことも、そのときのワクワクや楽しい気持ちを、当時の蘭ちゃんはちゃんと掴むことができたんだな、よかったな、と思います。
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この交換日記をしようと蘭ちゃんを誘ったとき、「蘭ちゃんにとって、『自分』と『他人』の間で書ける場があればいいなと思った」と、たしかに言いましたね。おぼえていてくれてうれしいな。
我ながらお節介な発言だなーと恥ずかしいけど、わたしはいつも、自分のしたいことはまるっきりわからないのに、他人のいいところを伸ばす方法や、何をしたらいいかのアイデアばかり浮かんできます。気質なので最近はあきらめて受け入れていますが、頼まれてもいないのにあれこれ提案してしまい、落ち込んだことも数知れずあります。今回は、幸いにも喜んでもらえて、実現して、続けられる場所もあって、しかもわたしも参加できて、とてもうれしいです。
自分を深く掘って出す小説の創作と、他人から引き出して知るインタビューの「間」というのは、まさに、喫茶店のテーブルを挟んで対話をするようなイメージでした。自分と他人の間にある、幅広く答えのないものを一緒に楽しみたいなと思って言いました。
「サクちゃんは、わたしと雑談することで何か変化ってありましたか?」という質問に答えると、もちろんありました。
蘭ちゃんとわたしは、すごく似ているところと、ぜんぜんちがうところがあります(まあ人と人とはどんな組み合わせでも大概そうなのだろうけどね)。
こうして自分から出したり相手からもらったり交換していて、ちがいを知ると、より自分を知ります。似ているところを知ると、特別な痛みや経験だと思っていたことが「あるある」になります。ちがっていても似ていても、どちらもいいことがあるので、何を出しても大丈夫だと思えます。それって、すごくいいことで、わたしの生涯の課題である「素直であること」に近づきます。蘭ちゃんとの雑談で、わたしはより素直になっていると思えます。だから、わたしも、ありがたいと思っていますよー!
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もうひとつ、印象的なインタビューがあるかという質問ですが、いちばん楽しかったのは、「セブンルール」というTV番組に出演したときの経験です。正確にはインタビューとはちょっとちがうかもしれないけど。
「セブンルール」はその人の7つのルールを紹介する番組なのだけど、対象の人や担当のディレクターさんによってルールの決め方や見つけ方がちがうそうで、密着取材をする中で「それ、ルールじゃない?」と見つけていくこともあれば、取材対象者が自分で「こんなルールがあります」と出すこともあるそうです。
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