「これ、ホントにもつ?」
最大のこだわりは鮮度。仕入れは毎日。当日食べきる
女はもつ焼きにときめかない。長らく私は勝手に決めつけていたが、とんでもない偏見だった。艶よくカラメル色に光った串の1本目を食べて、すぐに謝りたくなった。
高級なステーキ肉のように柔らかく、しつこくない脂身がじゅわわわっと。
「え、これ、ホントにもつ?」
思わず無遠慮な大声が出てしまった。
一頭買いなので数に限りあり。希少部位もオール110円。菊油の名は茹でると菊の形になることから
7年ほど通い続けている編集のモトさんは、でしょうと勝者の笑みを浮かべる。
くたくたの仕事帰り、途中下車してわざわざ寄りたくなるのがこの店なのだという。前々から、取材候補として猛プッシュをしていた。
「もつ焼きだけじゃなく、もつ煮込みも小鉢も、すべてがものすごくおいしいんですよ。ずっと夜だけの営業だったんですが、コロナの影響で5月末から定食を始めたっていうんでチャンスだって思って」
もつ焼き4本、味噌汁、ごはん、ぬか漬け3種、小鉢(この日は松前漬け。大きな数の子入り)で680円だ。
写真のもつは、ハツ、しろ、菊油(きくあぶら)、ちゃんぽんの4つ。
私があまりの旨さに叫んだのは、菊油だ。小腸の周囲の脂で、他の店ではなかなかお目にかかれない部位らしい。
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