創業62年、伝説のもつ焼き屋に悲願の定食誕生【もつ焼き】ばん

地元民から愛される絶品メニューがある。キャベツがぱりっと新鮮。漬け物はできる限り自家製。安い。女ひとりもOK。5条件を満たす定食屋を『東京の台所』の著者・大平一枝(おおだいらかずえ)が訪ね歩く。儲けはあるのか? 激安チェーン店が席巻するなか、なぜ地価の高い都会で頑張るのか? 絶滅危惧寸前の過酷な飲食業態、定食屋店主の踏ん張る心の内と支える客の物語。今回は人気のもつ焼き屋が始めた定食の裏側に迫る。

「これ、ホントにもつ?」


最大のこだわりは鮮度。仕入れは毎日。当日食べきる

 女はもつ焼きにときめかない。長らく私は勝手に決めつけていたが、とんでもない偏見だった。艶よくカラメル色に光った串の1本目を食べて、すぐに謝りたくなった。
 高級なステーキ肉のように柔らかく、しつこくない脂身がじゅわわわっと。
「え、これ、ホントにもつ?」
 思わず無遠慮な大声が出てしまった。


一頭買いなので数に限りあり。希少部位もオール110円。菊油の名は茹でると菊の形になることから

 7年ほど通い続けている編集のモトさんは、でしょうと勝者の笑みを浮かべる。
 くたくたの仕事帰り、途中下車してわざわざ寄りたくなるのがこの店なのだという。前々から、取材候補として猛プッシュをしていた。
「もつ焼きだけじゃなく、もつ煮込みも小鉢も、すべてがものすごくおいしいんですよ。ずっと夜だけの営業だったんですが、コロナの影響で5月末から定食を始めたっていうんでチャンスだって思って」

 もつ焼き4本、味噌汁、ごはん、ぬか漬け3種、小鉢(この日は松前漬け。大きな数の子入り)で680円だ。
 写真のもつは、ハツ、しろ、菊油(きくあぶら)、ちゃんぽんの4つ。
 私があまりの旨さに叫んだのは、菊油だ。小腸の周囲の脂で、他の店ではなかなかお目にかかれない部位らしい。

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台所の数だけ、人生がある。お勝手から見えてきた、50人の食と日常をめぐる物語。

東京の台所

大平 一枝
平凡社
2015-03-20

この連載について

初回を読む
そこに定食屋があるかぎり。

大平一枝

絶滅危惧種ともいわれながら、今もなおも人々の心と胃袋をつかみ、満たしてくれる「定食屋」。安価でボリュームがあり、おいしく栄養があって…。そこに定食屋があるかぎり、人は店を目指し、ご飯をほおばる。家庭の味とは一線を画したクオリティーに、...もっと読む

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コメント

momoparfait728 ここよく行ってたなー。 4ヶ月前 replyretweetfavorite

ymkkym もつ焼き定食、ええなぁ。サワーももちろんたのんでまうやろな、昼間っから。 4ヶ月前 replyretweetfavorite

chiruko_t サワー発祥のお店。 4ヶ月前 replyretweetfavorite