あなたの周りの大人の方がずっと愚かじゃん

母親との関係に悩む18歳の相談者。アルコール依存の母親に振り回される彼女に、幡野広志さんはなんと答えるのでしょうか。

※幡野広志さんへ相談を募集しています。専用フォーム(匿名可)からご応募ください。

母との関係に悩んでいます。父はわたしが生まれて間もないころに離婚し、今は疎遠です。

わたしの母は昔からお酒を愛していました。病院にかかっていたわけではないので定かではないですが、今から考えてみると、おそらくアルコール依存症だったのだろうと思います。
仕事が終われば帰宅早々と次々に瓶や缶をあけていき、日付を超えたあたりで寝落ちる。わたしはその母を出迎え、コンビニなどで調達したご飯を食べて布団で眠っていました。中学後半までそのような生活を送っていたように思います。

高校入学直前の、母の誕生日です。歳が離れておりすでに社会人として遠く離れた土地で一人暮らしをしている兄が、わざわざ地元まで来て共に買ってくれたケーキを食べていたときでした。
わたしが目を離した隙に、母が床に倒れていたのです。いわく、身体が動かないとのことでした。うまく立ち上がれもしないし、ろれつも回っていません。酔うとろれつが回って支離滅裂なことを言い出すのは日常茶飯事でしたが、それとは確実になにかが違うような感じを受けました。
そのときはまだのんきに「どうしたの?」「やばいやばい」などと言っていました。数時間経ったとき、いまだ動けない母を見てようやく危機感を抱き、わたしは「救急車を呼ぼう」と提案しました。祖母が医療従事者でしたので、祖母に連絡してからのほうがよいかもしれないと電話しようとしたところ、母はとても怒った顔と声で「絶対に連絡するな。救急車も呼ばないしおまえははやく寝ろ」と言いました。このとき母は祖母に「酒を呑みすぎるな」としかられていたので、祖母を呼んでまたこんなに呑んでと怒られるのが怖かったのでしょう。
母は酔うと頻繁にわたしに暴力を振るいました。暴力といえるほどのものではないかもしれません。所詮女性ですから、そこまでの力もなければ痕が残るようなこともなかったのです。それでも振るわれた瞬間はひどく恐ろしいから、酒を呑んでいる母に対しおびえていたこともあります。わたしは「わかった」と言い、布団に入りました。

翌朝起きてみると、母は失禁したまま眠っていました。母に声を掛けて後始末をし、怒られてもいいから救急車を呼ぶことにしました。
祖母に連絡するとすぐに来てくれることになりました。さいわい病院も近かったですから、救急車もすぐ来てくれました。
到着した祖母は「からだが動かないときは早く救急車を呼ぶべきだ」と怒っていました。わたしはおろかにも一晩放置してしまいましたから当然です。救命士の方も同じようにおっしゃっていました。病院への付き添いは祖母がしました。
わたしは祖母と同居している叔父とともに家を片付けていました。叔父は怒っていました。「連絡ひとつも出来ない役立たずが」と散々に罵られたのは今でも覚えています。

結局、母はアルコール摂取過多による脳出血によりしばらく入院することになりました。

今はリハビリを経て退院し、自宅にてわたしとふたりきりで暮らしています。左半身不随になってしまいましたが、仕事も辞めてもてあました時間を家事につぎ込むことで楽しそうに暮らしています。
むかしはほとんどご飯といえばコンビニ弁当でしたから、温かいご飯が食べられるのはうれしいです。昔よりも関係性は良くなったのは確かでしょう。

しかし、母は最近になってまたお酒を呑むようになってしまいました。量も昔と同じくらい呑んでいるように思います。
祖母からは「からだに悪いからアルコール類を摂取していたら止めて」といわれているのですが、声を掛けても母は不機嫌になり「あんたには関係ない」といわれてしまいます。
強く言えればいいのでしょうが、また怒られたらと考えると言うに言えません。しかし祖母に相談するのも、後日母から「祖母に言ったでしょ」と怒られるであろうことは分かりきっているので言えません。

誰かに相談したくとも、わたしと兄は歳が二桁も離れていますので、基本的に仲良くもありませんし連絡だってしません。祖母も叔父も、母との関係性のほうが強く濃いので母を第一に動きます。きっと今から言ったってまたわたしが怒られるのだろうと思います。
怒られるのが怖くて、どうすればよいのかわかりません。怒られるであろうことにも納得がいきません。

わたしはどうしたらよいのでしょうか?このまま母が自滅するのを見ていればよいのでしょうか?怒られる覚悟を決めて母を注意すればよいのでしょうか?

幡野先生に聞くことではないのかもしれません。他の相談に比べたら幼稚な内容かもしれません。ですが、ぜひ幡野先生の意見を伺いたく相談させていただきました。

長文、乱文申し訳ありません。また、相談事と関係のない内容が多く含まれているかもしれませんが、失礼いたします。




(N 18歳 女性)

「わたしが目を離した隙に、母が床に倒れていたのです」って書いてあるけど、15歳の女の子が親から目を離すなんてあたりまえじゃん。2歳児じゃないんだからさ。視界の中に親を入れたくないって人がいてもまったくおかしくない年齢です。

倒れてろれつが回らないということだけ聞けば、脳梗塞だとか脳卒中だとか違いはまったくわからないけど、脳に異常があるのだとぼくでもすぐに気づきます。でもそれはあなたよりもぼくが20年ぐらい長く生きているからですよ。一年間で蓄えられる知識量ってとてもおおくて、それが20年もあるのだから当然です。

でも、実際に脳梗塞や脳卒中だとかで目の前で人が倒れたという経験はないから、あなたとおなじ状況になったときにすぐに救急車を呼べる自信はありません。むしろ数々の酔っ払いを見てきているから、酔ってるのかな?っておもっちゃうよ。知識があっても経験がなければそんなもんです。

お母さんが倒れた日の夜はめちゃくちゃ不安だったろうし、翌日はめちゃくちゃショックだったでしょ。救急車を呼べなかったことをおばあちゃんや叔父さんから怒られて自分を責めて、お母さんが左半身不随になってしまったことを自分のせいにしているでしょ。あのね、あなたのせいじゃないんだよ。

酔っ払ったら暴力を振るったり威圧してくるお母さんから「絶対に救急車を呼ぶな、寝ろ」っていわれれば、救急車を呼べる子どものほうが少ないとおもうよ。

叔父さんから怒られたみたいだけど、もしもぼくがその場にいたらあなたに自分を責めるきっかけをつくったことを、ぼくは叔父さんに怒るとおもうんです。15歳のあなたがどうして救急車を呼べない心理状態になっていたのか気づいてほしいよね、あなたよりも長く生きて偉そうにしているんだったら。

叔父さんがあなたに怒ったのは悲しさとか不安とか面倒くささとか、そういういろんな感情を全部怒りに変えて、矛先をあなたにむけて切りつけてきたんですよ。わかりやすくいうと、イライラして憂さ晴らしをしたの。長く生きてるだけのアホっているよね。

おばあちゃんはお母さんと叔父さんがまだ子どもの頃からずっと、きっとめちゃくちゃ怒る人だったんだよ。じゃなかったらお母さんもそこまで過剰におばあちゃんへの連絡を嫌がらないよ。お母さんがおばあちゃんへの連絡を過剰に嫌がる心理状態になっている理由があるとおもうよ。

人って過剰に怒られると、問題がおきたときに怒られたくなくて問題を隠そうとするんだよね。きっと離婚したときも散々にいわれてるんじゃないかな。

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幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。

幡野広志

写真家・幡野広志さんは、2017年に多発性骨髄腫という血液のガンを発症し、医師からあと3年の余命を宣告されました。その話を書いたブログは大きな反響を呼び、たくさんの応援の声が集まりました。想定外だったのは、なぜか一緒に人生相談もたくさ...もっと読む

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コメント

satoh_walker 幡野さんの言葉はとっても厳しい。鋭くて細くて一番痛いところをぐさっと。 5日前 replyretweetfavorite

Lave_chamo 〝介護と病気は健康なときの人間関係をあぶり出すものなんだよ。〟 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

neko_mura222 まだ18歳の子供に“ 自分の置かれた環境の理不尽さ ”を理解するのは難しい。というか、たった18年で分からなくたって当たり前。いま「逃げてもいい」と教えてくれる誰かに出会えた相談者の未来が幸せになるように祈ります。 https://t.co/U789epAGR5 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

sabochin 「あなたがこの3年間で買わされたのは苦労じゃなくて理不尽です」っていうの、ハッとした。なるほど。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite