自転車おばさんの巻

バンドマンなのに革ジャンが似合わない、ロックバンドのボーカリストなのに肩書以外過剰なところがひとつもない……カッコつけてると思われたくなくてカッコつけられない! 自意識と憧れの狭間で叫ぶ! 2020年5月下旬発売、ロックバンド・フラワーカンパニーズ鈴木圭介の自意識爆発エッセイ集『深夜ポンコツ』から傑作コラムを特別公開!「たとえ今が冬だったとしても、季節は巡る。春はまた来るのだ!」

いつも、リハーサルスタジオまで片道20分ぐらいかけて自転車で行く。先日、信号待ちで、たまたま隣りになったおばさんがいた。同じく自転車に乗っていて、どうやら目指す方向が同じらしい。

その日は、やたらと信号に引っかかる日で、足止めをくう度に、そのおばさんと信号で一緒になる。見た感じおそらく50代で、おばさんそのものであるが、思ったより自転車のスピードが速い。自分はまだ40代になったばかりだし、ライブを年間100本やっているので普通のサラリーマンより体力は自信がある。自転車を漕ぐスピードもどちらかと言えば速い方。50代のおばさんに追い越されるなんて、まずあり得ない。

そのおばさんは特に鍛えている風でもなければ、際立って負けず嫌いな感じにも見えない。自分と勝負している感じでもないし(勝負してる人の場合、信号が青になる少し前に、傾姿勢でダッシュの準備をしていたりする)、急いでいる様子もない。

前のカゴにはスーパーのレジ袋が入っていてネギが顔を出しているし、体型も重力に逆らわない典型的なおばさんそのものだが、常に自分の右ちょっと後ろ辺りをキープし続け、赤信号のたびに真横に並ぶという繰り返しに。

自転車に乗る人ならわかると思うが、ずっと隣りに知らない人に並ばれると非常にストレスがたまる。4回目の信号待ちの時、遂に僕は勝負を決めようと思った。その先は登り坂で、それほど急な坂ではないが比較的長く、普段は立ち漕ぎなしで登りきるというのを自分の中のルールにしていた。

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深夜ポンコツ

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sayusha 【試し読み】 発売中!#フラワーカンパニーズ 鈴木圭介さんの『#深夜ポンコツ』より「」。 「4回目の信号待ちの時、遂に僕は勝負を決めようと思った」 |鈴木圭介 @FlowerCompanyz | 4ヶ月前 replyretweetfavorite