民のかまどと、税と労役の免除
仁徳四年二月六日、天皇は臣下たちに詔して、
「私は高台(たかどの)に登って遠くを眺めたが、国の中に煙が立っていない。思うに、民が大変貧しく、家で飯を炊く者がいないからであろう。
私の聞くところでは、『古の聖王の御代には、人々は、国王の徳をほめたたえる声を上げ、家々には安らぎの歌があった』という。
今、私は天下を治めて三年になるが、称賛の声は聞こえず、かまどから上る煙は、いよいよ疎(まば)らになった。
そのことから、五穀が実らず民が困窮していることを知った。畿内ですら、食べ物が足りない状態なら、畿外の土地では、なおさらであろう」
三月二十一日、天皇は、
「今後三年、全ての課役を免除して、民の苦しみを癒せ」
と詔しました。
この日から、天皇の礼服や履物は、破れるまで使い、食べ物は、腐るまで取り換えませんでした。
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