マレーシアが不可能を可能にした15の方法

政権交代直後にコロナ禍に見舞われたマレーシア。しかし、そんな中でも今回のパンデミックにうまく対応したと評判になっています。マレーシアの人々は今回のコロナ騒動にどう対応したのか、現地に住む野本響子さんが紹介します。

前回「個性が強みになる社会」の話を書きました。

マレーシア社会の話をしていると、「日本ではスキルが高くないと活躍できないです」「日本の教育では個性が育ちません」とか、「日本にもこんなリーダーがいたらいいのに」というご意見をいただくこと、少なくありません。

もしかしたら、「なんだかすごいヒーロー」と「それに従う大勢の人々」がいて、社会が回るイメージがあるのかもしれません。うまくいえないのですが、マレーシアにいると、社会の主役はむしろ普通の人々です。そして一人ひとりは日本とあまり変わらない気がします。

ただ1つ違いがあるとしたら、「能力がない人は、発言したり、活躍したりしちゃいけない」という考えがないことかな。


一人のすごいヒーローがいるわけではない

今回のパンデミック、アジアはどこも比較的うまく対応できているようですが、中でも、マレーシアの人々の落ち着きっぷりに驚く外国人は少なくありません。

当初かなり大きなクラスターを出したのに、死者も少ないです。
もちろん、未知のウイルスなので、わからないファクターがたくさんあります。年齢や男女差、生活習慣も関係しているかもしれません。

ただ、これを不思議に思ってるのは、私だけじゃなかったようです。

Other Side of the TruthというYoutuberの動画がマレーシアで話題です。 世界の全ての国を旅行したというアメリカ人が、マレーシア人はなぜ不可能を可能にするかを解き明かしています。

公開して10日程度で、36万回(!)も視聴され3.9万もの高評価がついたこの動画。タイトルは「How Malaysia Did The Impossible」で、「なぜマレーシアでは不可能が可能になるんでしょうか?」って感じでしょうか。

動画は不吉な前兆から始まります。
「想像してください。あなたの国は大変な政治的危機にあります。リーダーが新しくなり、いくつかの州でも新しい政府が誕生しました。そんな危機の中でパンデミックが発生したのです」
「しかし! 決してマレーシア人の底力をあなどってはなりません」

として、マレーシアが「不可能を可能にした方法」を15個挙げています。

簡単に、内容を紹介します。

No.15 寄付とボランティア組織の助けが大きかったこと
No.14 保健省のトップが優秀な医師で、正しい情報を提供し、人々を冷静にした
No.13 MCO(活動制限令)とEMCO(強化された活動制限令)で多くの組織・人が協力して働いた
No.12 食料の配達など間接的なボランティアの働きが効果的だったこと
No.11 一時的な病院を3日で建設したこと
No.10 最大のクラスターである宗教施設にいた人々が指示によく従ったこと
No.9 銀行がローンを6ヶ月猶予したこと
No.8 大学が学生を無料で滞在させ、食事を提供したこと
No.7 政府が400万もの家庭に1600RM(4万円ほど)を給付した
No.6 政治家が政争を一時棚上げして協力したこと
No.5 ホームレスと外国人労働者にテントを提供したこと
No.4 海外から帰国するマレーシア人に二週間のホテル・食事・ウイルスのテストを提供したこと
No.3 最前線で働く人への強いリスペクトがあったこと
No.2 個人用の防護具不足に対して、デザイナーや組織が早く動いたこと
No.1 チームワークが素晴らしかったこと

うまくいった一番の理由はマレーシア人の「チームワーク」にあるとしています。

この動画を最後まで見ると、「ヒーロー」が、ごく一般の人々であるのがわかります。コメント欄も、他の国の人たちからの称賛の声と、自国を誇りに思うマレーシア人の声が多いです。

「公正かつ正確な評価です。私たちは人種、言語、宗教が異なります。パンデミックでは、すべてのマレーシア人が違いを一旦忘れ、団結しました」
「私の国はこんな小さな国だけど、誇りに思います。政府は本当に良い仕事をしました」
「私たちマレーシア人は違いを尊重するために洗脳されてます。だから、政治問題は深刻な問題ではありません。私たちはただクールで穏やかなのです」

他の国に対して「どうだ」と威張る声も少ないです。

もちろん、マレーシアだって完璧じゃありません。しかし、危機の一番ひどいときには、それまでの対立や揉め事や政治問題はいったん棚上げされ、人々は協力する道を選びました。また、前線で物を届けてくれるGrabのドライバーや医療機関の人に感謝している人が大勢います。ドライバーは副業でやっている人が多いです。Grabにはチップを渡す機能が付いていますから、多めに払っている人もたくさんいるはず。

どんな人でも活躍していて、尊敬されるという社会のこういうムード、大事だと思います。

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怒らない力—マレーシアで教わったこと

野本響子

編集者・ライターの野本響子さんがマレーシアで暮らし始めて感じたのは、日本にくらべて驚くほど寛容なマレーシアの社会。「迷惑は掛け合うのが当たり前」「怒る人ほど損をする」など、日本の常識からしたら驚くことばかり。 この連載では、そんなマレ...もっと読む

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コメント

malay_info #マレーシア 5ヶ月前 replyretweetfavorite

Chuck_euoni 毛利の三本の矢を思い出した。普通の人が1人ではなく束になればヒーローになる。アッセンブル!みたいなね。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

yourmyken >「ジェネラリスト」が10人いると競争になりますが、「変わった人」が10人いても競争にはなりにくいのです。 5ヶ月前 replyretweetfavorite

mmr_hrk 違いを認め合う事が出来る、そして「個人の主張はとりあえず置いといて」が出来る強さ。 → 5ヶ月前 replyretweetfavorite