明け方の若者たち

その笑顔が嘘じゃないなら

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」その16文字から始まった、沼のような5年間ーー。
6月11日に発売するライター・カツセマサヒコさんのデビュー小説『明け方の若者たち』。安達祐実さんや村山由佳さん、尾崎世界観さんなども推薦する注目の作品より、1章・2章を8日間連続で特別公開します。(全8回/5回目)

「なんでさ、抜け出したのに、わざわざ飲み直そうとおもったの?」

さっきまで二人でいた滑り台まで戻って、乾杯し直したところだ。僕はここまでずっと疑問におもっていたことを、ストレートにぶつけてみた。彼女の反応が見たかったのもあるし、誰でもよかったのか、僕を選んでくれたのか、真意が気になってもいた。コンビニに向かった二十分の間に、さらにこの公園は、暗くなっていた。

彼女は少し困った顔をしてから、えへへと誤魔化すように笑った。

「あんなに騒がしいのは嫌だなあっておもったけど、でも一人で飲み直すのも、寂しいじゃん?」

「うん」

「で、スマホ見たら、着信履歴が残ってて」

「それで、誘ってみたの?」

「やっぱり、ダメだったかなあ?」

その笑顔はあざとさに満ちていた。核心には触れないように上手に聞き返した彼女は、僕の好意にすでに気付いているようにもおもえた。「いや、ダメじゃないけど」と返しながらストロングゼロで唇を濡らすしかなかった僕は、彼女の真意に辿り着くことができないまま、この話題は終わらすほかないと悟った。

「でも、来てくれたの、嬉しかった」

満足そうに言う彼女は、改めて僕に乾杯を促した。

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明け方の若者たち

カツセ マサヒコ
幻冬舎
2020-06-11

この連載について

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明け方の若者たち

カツセマサヒコ

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」その16文字から始まった、沼のような5年間ーー。 2020年6月11日に発売する人気ウェブライター・カツセマサヒコさんのデビュー作『明け方の若者たち』。安達祐実さんや村山由佳さん、尾崎世界観...もっと読む

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コメント

katsuse_m 第五話 |明け方の若者たち https://t.co/jsr3mphtNg 5ヶ月前 replyretweetfavorite

z4yu1 わたしは三枚目派でした。 あと6日 5ヶ月前 replyretweetfavorite