「なんでさ、抜け出したのに、わざわざ飲み直そうとおもったの?」
さっきまで二人でいた滑り台まで戻って、乾杯し直したところだ。僕はここまでずっと疑問におもっていたことを、ストレートにぶつけてみた。彼女の反応が見たかったのもあるし、誰でもよかったのか、僕を選んでくれたのか、真意が気になってもいた。コンビニに向かった二十分の間に、さらにこの公園は、暗くなっていた。
彼女は少し困った顔をしてから、えへへと誤魔化すように笑った。
「あんなに騒がしいのは嫌だなあっておもったけど、でも一人で飲み直すのも、寂しいじゃん?」
「うん」
「で、スマホ見たら、着信履歴が残ってて」
「それで、誘ってみたの?」
「やっぱり、ダメだったかなあ?」
その笑顔はあざとさに満ちていた。核心には触れないように上手に聞き返した彼女は、僕の好意にすでに気付いているようにもおもえた。「いや、ダメじゃないけど」と返しながらストロングゼロで唇を濡らすしかなかった僕は、彼女の真意に辿り着くことができないまま、この話題は終わらすほかないと悟った。
「でも、来てくれたの、嬉しかった」
満足そうに言う彼女は、改めて僕に乾杯を促した。
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