どうも。前回突如我を襲ったぎっくり首も何とか治り、(首を)ハチャメチャ気遣った究極の良い姿勢で机に向かうこともしなくて済むようになり、在宅ワークライフに再び平穏が訪れました。
ただ、またいつ再発するか全くわからぬ状況ですので、普段から究極とはいかずともいい姿勢を保つしかないですな。
話は変わりますが、この連載の執筆をしていると、当時の事を思い出して懐かしい気持ちになり、 更にしっかりと思い出したいなあと、当時の公演のDVDをめちゃくちゃ見るようになりました。
確かに、確かに楽しいんですよ。思い出すのは。
でも、、 温故知新という言葉がありますが、こんなにも「知りたくなかった」自分の古きを知り、 新しきを知らなければ終わるわ。と思わせてくれる事もなかなか無いことです。
ある種のランナーズハイみたいな感じでしょうか。
というわけで今日も昔の古傷を抉って行こうと思います。 皆さんもぜひ、傷口に塩を塗り付けるように読んでおくんなまし。
トップスターさんの卒業
宝塚歌劇団に入団し、はち切れんばかりの笑顔で初舞台ロケットダンスを踊り、夏美組長の美貌に心奪われて入りたいと思っていた花組に配属が決まり、『ファントム』『明智小五郎の事件簿~黒蜥蜴~』と、同期と共に沢山の造語を生み出しながらお稽古・公演の日々を過ごし……(超ざっくりあらすじ)。
花組生として出演する3作品目の『アデューマルセイユ/ラブ・シンフォニー』にて、当時のトップスターさんである、春野寿美礼さんが卒業されることになった。
就任されてから5年間(当時の平成入団後のトップ就任歴では最長)、花組のトップスターさんとして輝き続けている春野さんが卒業される。
ファンの方々もさぞショックを受けていたと思うが、組子をはじめ、演出家の先生、振付家の先生、大道具さん、小道具さん、お衣裳部さん、、etc、宝塚歌劇団に関わる全ての方々が寂しさと感謝の気持ちでいっぱいだった。
当時、私はというと、花組に配属して1年が経とうという頃だった。
「ミネソタ?」の洗礼(15話参照)を受けてから早1年、5年間の就任期間のうち、僅か3作品しかご一緒出来なかった。僅かだ……あまりにも僅かすぎる。
もともと、自身の初舞台が宙組公演『Never Say Good Bye』という、タカラヅカのレジェンドオブレジェンドのお二人(和央ようかさん・花總まりさん)の退団公演だったので、お客様や組子の皆さんの悲しい気持ちや、盛大なお見送りは経験していたのだが、きちんと「花組の一員」になってから、自分の組のトップスターさんが卒業する、というのは初めてだったので、ものすごく寂しくて、そして、不安だった。
花組に配属されて間もないころ、まだまだ右も左もわからず、どうすれば良いかわからない時、まず1番に追いかけるのがトップスターさんのお背中だ。
組の顔であるトップスターさんが、この作品をどのようにしていきたいか、組子がしっかりと受け、全体競技で支えていく。それを実現させるために組長さん、副組長さんがしっかりと組子全員へ的確に指示を出し、なかなかできない最下級生がいたら上級生の方が面倒をみる。
そうやってしっかりと「今の花組」を作っていくということを、やっと少しずつ理解してきた最中のトップさん卒業。
まだ自発的に何も考えることが出来ずただただ追いかけていた親鳥が、突如いなくなった雛のような気持ちだった。
僅かな間でも、今でも鮮明に思い出す事は沢山ある。
『ファントム』の公演中、トップ娘役の桜乃彩音(さくらの・あやね)さん演じるクリスティーヌと、真飛聖さん演じるシャンドン伯爵が、夜のパリで二人で歌うという場面で、その後ろを下級生メンバーのみで通行し、踊る事になった。
私は、1期上級生の娘役の方と2人で夜のパリをデートする、という体で芝居をしないといけなかったのだが、当時「男役」として何をどうすれば格好良いのか、ひとつとしてテクニックが無かった私は、ただただ上級生に引っ張ってもらうだけの、端から見れば「初デートにビビりっぱなしの男とリードする女性=かかあ天下」に見えるようなデートになってしまった。
その時、同期の花輝真帆(はなき・まほ)が演じる花屋のセットの後ろにスタンバイしている春野さんが、私の芝居を見ていて下さり、芝居のアプローチについて沢山のアドバイスを下さった。
どうすれば男がリードして見えるのか、さりげなく格好良くできるのか、見ているお客様に面白いなと思ってもらえるのか、など、様々な「視点」をイメージした「課題」を貰う。
仰って頂いたことに気を付けて取り組み、その日の稽古終わり、春野さんに自分はどうだったのかお聞きしに行った。
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