cakes読者のみなさま、こんにちは。
家で料理をしていると、自分の料理に飽きてくることがあります。でもそんなときはちょっと実験気分で、いつもはあまり使わない素材を使ってみるのはいかがでしょう。思いがけず新しい味に、にやっとするような発見があります。
たとえば、私は鶏の手羽先が好きで、スーパーマーケットの肉売り場に行くと、とりあえず手羽先を手にします。一番多く作っているのはおそらくスープなのですが、夕飯を急いでいるときはそこにご飯や麺を加え、薬味や青菜などを適当に入れ、小鍋料理にすることが多い。鶏手羽先のだしの、あっさりしてるけどうまみがぎゅっとした感じが飽きないんです。ポルトガル料理にも、鶏をまるっと煮て作る「カンジャ」というスープがあり、以前この連載でも紹介していますが、スープの底の方には、柔らかい米か、くたくたに茹でたショートパスタが入っていて、食べるスープのようでもあります。安くて簡単だから、どこの家庭でも作るポルトガルの定番料理ですが、私はこれも好きで、丸鶏の代わりに手軽な手羽先で作っています。
でも、です。いくら好きなものでも、頻繁に食べると飽きる。自分が平気でも家族が飽きる。よし、もう今日は手羽先は買わない。違うものを買うぞ。そう思いながら肉売り場を覗いていたら、手羽先の隣に並んでいた鶏のハツにふと目が行きました。そうだ、ハツでだしを取ろう。ちょうど「料理通信」5月号の肉特集で、青山の中華風家庭料理「ふーみん」の斉風瑞さんが、ハツのだしを紹介しているのを読んで気になっていたのです。
ハツは食感が面白いので、茹でて酢やゴマ油をかけておつまみにすることがあります。でも、その茹で汁をだしとして料理に使うという発想は、なかった。全然なかった。だから斉さんのハツだしの記事を読んで、目から鱗でした。早速ハツを買い、茹でてだしを取る。するとこれがまた、すっきり上品で豊か。手羽先ほど強くはないけれど、しっかり味が出ている。しかもあっという間にできる。5分もあればできるんです。さすがふーみん。台湾家庭料理恐るべし。ささやかな、でもしっかり手ごたえのある喜びは、キッチンでにやりって感じです。ふーみん、新しい味をありがとう。
ハツを茹でるのは正味1分程度。だから食感はプリっとしています。これはいっそお米を入れて中華風雑炊にして、ハツも具として一緒に食べたい。うまみの濃いアスパラと合わせると、食感も味わいも違って面白い、上品な雑炊になるはず。そんな感じで、この「アスパラと鶏ハツのさらさら中華がゆ」ができました。
最近は、料理ができるとテーブルで小6女子が待ち構えているので、味見をしてもらい、コメントをもらいます。前回ご紹介したアスパラご飯も食べているので、どっちが好きかと聞いてみました。彼女的にはハツの雑炊の方が、食感や味の加減が好みだそう。へえ、面白い。てっきり肉がたっぷりのアスパラご飯かと思っていたので、子どもはこういうの好きだよね、って思い込みが強いことをちょっと反省。
というわけで今回も、大人も子どもも喜ぶ、なおかつ呑める路線です。合わせるワインは、ポルトガルのヴィーニョヴェルデです。
初夏なのに急に寒くなったりする日が多いですが、そんなときは温かい雑炊をどうぞ。
では、パパッと作っていきましょう。
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「アスパラと鶏ハツのさらさら中華がゆ」
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