おわりに 新しい時代の重心は「私たち」である
まず、本書を手に取り、ここまで読んでいただいた読者のみなさんに感謝です。改めて言うまでもありませんが、本書は「正解」を説くものではありません。あくまで私が考えた、人生100年時代における時間戦略の「選択肢」を提示したにすぎません。それ故、何を狙っていたかというと、決して「石川の考えに同意して取り入れてほしい」ということではありません。あくまで石川の立場を鮮明にすることで、みなさん自身の固有の時間戦略が相対的に明らかになることを意図しました。
さて、本書で言うべきことは、もうすべて出し尽くしたので、ここからはオマケです。締めくくりとして少しだけ「時代」についてお話しさせてください。思い返せば1章で、私は次のような話をしました。
Q.「新しい時代」を語れるのは誰か?
〉〉〉A .新しい時代を語れるのは「若者だけ」
いま私は39歳です。さすがにもう自分を若者だとは思えず、時代について語るのを躊躇するようになりました。逆に私が願うのは、10代〜30 代の若者たちがもっと「新しい時代はこうなる!」と積極的に構想していくことです。そのような提案が相次ぐ中で、22世紀に向けて希望がどこにあるのか、少しずつ明らかになることでしょう。
とはいえ、新しい時代のキーワードをどのように見つけたらいいかわからない。そのように悩む方も多いと思います。そこで最後にお話ししたいのは、私自身が長いこと取り組んできた次の問いです。
Q.時代を創るとは何か?
運も含めて、あまりにも多くの要因が複雑に絡み合い、時代は創られます。ただ、それでは何も言ってないですし、何より次の時代のキーワードを考える上で何の役にも立ちません。私が着目したのは、「そうは言っても時代ができるときの太い流れは何か?」という点です。すると、次のような流れがあることに気がつきました。
〉〉〉A .学問→産業→文化の流れで新しい時代は作られる
すなわち、次なる時代の出発点には、新たな学問の誕生があります。その学問を礎にして、新しい産業が生まれる。そして産業が起こった街で、新たなる文化が花開く。
この「学問→産業→文化」という流れを作ることが、時代を創るということではないか。私はそのように考えました。
ここで思い出してください。冒頭に私は次のように書きました。
〉〉〉A.10年あれば、産業が変わる
〉〉〉A.30年あれば、時代が変わる
〉〉〉A.100年あれば、文明が変わる
覚えているでしょうか? おそらく、最初はよくわからなかったと思いますが、ここまでの話を踏まえると、少しわかっていただいたのではないでしょうか。
つまり、あらたな学問を礎にすれば、10年であらたらしい産業がつくれる。そして「学問→産業→文化」という流れを30年かけて作ることで、時代を創ることができる。
さらにいえば、「学問→産業→文化」という一連の流れをうまく循環させる仕組みを100年かけてつくることができれば、それは新しい文明とさえいえるのではないか。私はそのように信じていまを生きています。
さて、ここまで考えた時に、「はっ!」と気がついたことがあります。まさにかつてこの流れを作ったのが、渋沢栄一(日本の資本主義の父)だったのではないかと。
1910年、渋沢は次のような問いに取り組んでいました。
Q.日本はいかなる産業が可能か?
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