真のWell-Beingは「自分らしさ」から生まれる

人生100年時代が到来し、75歳頃まで一生懸命に働くだろう私たちに、 いま必要な「戦略」はなんなのか?予防医学・行動科学・計算創造学からビジネス・事業開発まで、縦横無尽に駆け巡る、 石川善樹さんの集大成!今日の仕事と、10年先の目標と、100年の人生をつなぐ戦略書『フルライフ』の発売に先駆け、特別先行掲載します。

真のWell-Beingとはなにか?

 あらためて、整理します。冒頭で述べた通り、本書のコンセプトは次の通りです。

「時間の使い方に戦略を持つことで、フルライフを実現する」

 そして、次のようにも述べました。

〉〉〉A .フルライフとは、Well-DoingとWell-Beingの重心を見つけること

 時間のスケール(1日〜100年)がいかなるものであっても、変わらぬ時間戦略の本質は、Well-DoingとWell-Beingの重心を見つけることである。

 その際、次の図を示したのを覚えてらっしゃるでしょうか。

 本書の締めくくりとして、最後にこの図についてご説明させてください。

 まず、ここまでの話からお気づきの方はいらっしゃるかもしれませんが、私は基本的にはWell-Doingが好きな人間です。バリューを出さないと生きている意味がないと考えています。それ故、実は本書のほとんどがWell-Doingの話で占められています。

 そんな私がWell-Beingの重要性に気が付いたのは、ある意味「本当にバリューを出すためには何が大事なのか?」というWell-Doingを追及していった結果でしかありません。

Q.では改めて、Well-Beingとは何なのか?!

 まだ適切な訳語がないので、本書を通じて「Well-Being」というアルファベットで記述してきましたが、あえて私なりの訳語を提示するとすればそれは次のようになります。

〉〉〉A. Well-Being=(いい意味での)自分らしさ

 なぜそう訳したかというと、Beingの語源が「本質」ということに由来します。つまり、Well-Being(いい意味での本質)とはなんだろうかと考えていった結果、要するにそれは「いい意味での自分らしさ」ということでいいんじゃないかと。

 ここまで考えた後に、私は次のような問いにぶつかりました。

Q.では、「自分らしい」という感覚は、いかにして生まれるのか?

 この問いに対するアプローチ法は星の数ほどあります。それこそ、本屋の自己啓発書コーナーに行けば、無数のアドバイスが得られるでしょう。ただ私は、この問いに対峙する有益な道筋は、道元禅師にあると直観しました。

 道元禅師、曰く。

〉〉〉A .「自己をならふというは、自己をわするるなり」

 つまり、きわめて逆説的ですが、「自分」という感覚を忘れることで、結果として「自分」という感覚が得られるというのです。

 このような境地に私は立っていないので、あくまで類推でしかありませんが、おそらく自分を忘れると、一気に「世界=自分」という感覚になれるのだと思います。

 そのような感覚を得ることができれば、狭い意味での「自分」にとらわれることなく、大きな「自分=世界」として自由闊達にふるまうことができる。おそらく道元禅師は、そのような意味のことをおっしゃっているのではないかと考えています。

 ここで、先ほどの図をもう一度見てください。人生の初めは「Well-Doing」の割合が多いですが、年を重ねるにつれ減っていき、最終的にはすべてが「Well-Being」になっています。目的から逆算したがるタイプの私としては、すぐに次のように考えてしまいます。

〉〉〉A. だったらWell-Being(いい意味での自分らしさ)とは何か、そこから人生を逆算すればいい

 そして、私の結論は次の通りです。

〉〉〉A. Well-Beingとは、自分を忘れること、自分から離れることである

 これはある人から聞いてとても心に残っている話なのですが、「人間の成長とは自己中心性から離れること」だといいます。生まれたばかりの赤ん坊は自分がとても大事で、でも成長するにつれ、自分のおもちゃを友達に貸してあげられるようになる。

 親になれば、自分よりも我が子の方が大事になる。そしてさらに成長すれば、もはや「自分と他人」を区別しない境地に達するのだと。

 この話を聞いたときそれはある意味、残酷な話でもあるなと思いました。というのも、自己中心性から離れると、極端な話、「自分の子ども」と「他人の子ども」を区別しなくなるということです。それは子どもの立場に立つと「親から愛情を感じられない」ということにもなりかねません。

 実際、自己中心性からひどく離れたガンジーは、自分と他人の子を区別しなかったので、ガンジーの子どもはひどくグレてしまったといいます。

 そういう意味でも、タイミングが大事なのでしょう。Well-Beingで100%になるのは、75歳を超えた冬の時期がちょうどいいのかなと。とはいえそれは、「自分を手放す」練習をしなくていいというわけではないと思います。おそらく、次のような問いを常に考え続けておくことが、Well-Beingへと至る道なのだと思います。

Q.自分がいま大事にしているもの(仕事や家族など)を手放した時、人生は自分に何を望むだろうか?

 お恥ずかしい話ですが、やはりまだ私は小さな、弱い人間です。(自分の)仕事が大事ですし、(自分の)家族が大事に思えてしまいます。しかし、そのような「執着」を続ける限り、本当の意味での「本質(Being)」には至らないだろうと直観しています。

 たとえ思考実験だとしても、積極的に「いま大事にしているもの」を手放して、それでも人生は私に何を望むのか。そうした問いと向き合い続ける時間を持つことが、結果としてフルライフに向かうのではないか。

 ……そんな訳がわからない境地に、私は立っています。本当に自らの人生と真剣に向き合うのは難しいことですね。

 ところが。

 こんなややこしい話を友人にしていたら、「自分を忘れる、すごい方法がある」と教えてもらいました。それは通称「オーバービュー・エフェクト(概観効果)」と呼ばれているようです。

Q.では「オーバービュー・エフェクト」とは何か?

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石川善樹

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