新型コロナウィルス問題で鮮明化したお金の問題

新型コロナウイルスによって私たちの生活は激変しました。とくに経済的な打撃を被った方の不安はとどまるところがないでしょう。メディアでは、アベノマスクや一人10万円の給付金のことばかりが報じられますが、それ以外にも受けられる制度や支援はたくさんあります。経済評論家の佐藤治彦氏は、「情報へのアクセス手段を持っていることが身を守る」と言います。そのために、知っておきたい制度をご紹介します。

新型コロナでの経済的損失はリーマンショック以上

5月中旬には、39県の緊急事態宣言が解除されました。
しかし、自分の命と健康を守るために、3密を避けたり、ステイホームを今後も心がける必要が大切なようです。
皆さんはどのような生活を送られていますか? 
ストレスでもう参ったという人も多いのではないでしょうか?
また、残業代がなくなった、バイトのシフトがキャンセルになった、派遣切りにあったという経済的な問題で参っている人も多いと思います。
5月も中ごろになってきて、私の周りの人たちでも明らかに新型コロナウィルスにどちらかというと強い人と弱い人の差がついているなと思うようになってきたのです。

12年前にリーマンショックという一大経済危機があって、金融危機から世界中で深刻な不況や失業問題がありました。その時の世界の経済成長率はマイナス0・1%でした。
しかし、今回は国際機関の予想でマイナス3%以上になるとされています。
世界中で生きていく食糧を手に入れられない人が、新たに3500万人以上増えるとされています。
失業者も大勢出ています。

新型コロナウィルスの問題は、命と健康の危機であると同時に経済の問題であり、経済的な弱者にとっては、生活を続けていけるかどうかの危機でもあるのです。
緊急事態宣言も出されて1ヶ月近く経った大型連休中のある生放送の番組で大物芸能人の人が、
「俺なんか、ステイホームでストレスを感じるってのがわからないんだよね。家でゆっくりしているだけだろ、そんなのストレスでもなんでもないじゃない」
と言ってるのを聞いて、思わず突っ込みを入れていました。

きっと、この大物芸能人の方はお屋敷のような家に住んでいるのです。
庭付き一戸建て住宅で部屋がいくつもあり、それぞれの個室も完備され、きっとお手伝いさんが家の掃除や家事もしてくれるのです。
しかし、大都市に住んでいる普通の人の住環境はそんなにいいわけではありません。
それでも、自分の個室がある人は幸せです。
家族4人で70平米くらいの2LDKに住んでいる人はいくらでもいます。 騒音や日照の問題など、住環境が良くない人も大勢いるのです。
ですから、ステイホームでストレスが増すといっても、それぞれの環境でまったく違ってくるはずなのです。

仕事がまったくない添乗員、お客さんが激減する焼き鳥屋

私の知ってる海外旅行の添乗を仕事にしている人は、通常なら月に7日くらいしか家に戻りません。
ですから、住まいにはお金をかけない。日が当たらなくても、多少うるさくても家にいないのだから構わないと思っていたのですが、自粛のステイホームで、快適ではない家にずっといることになってしまいました。
さらに、海外の添乗の仕事は何日添乗したかで収入が変わります。
海外旅行はほぼ壊滅的な上に、国内旅行もほとんどなく、ステイホームによるストレスと、収入激減による経済的な困窮で大変な思いをしているそうです。

平日の昼間は子どもも夫も家にいないので自分の時間が持てて、ストレス解消ができていた主婦も、今や四六時中、家族がそばにいて、家族との関係が悪くなりそうだと言ってる人も少なくありません。
大切な家族だからこそ、適切な距離が大切なのかもしれません。
とくに家族の多い人は、同じ住環境でありながら、住まいを共有する人との距離感がぐっと縮まるという大きな変化が起きたのです。
アツアツの恋人たちや新婚さんのようにいつでもそばにいたいという人は稀なのです。

その点でおひとり様は、住環境そのものは大きく変わりませんね。
前述のような大物芸能人のような環境でなくても、個人の空間があるので一安心なのかもしれません。

それでも、いつもは気にならない上の階の住居などから聞こえてくる音もあるでしょうね。困った時にはお互い様でいけるといいですね。

しかし、収入が大きく減ってしまって困った人はいると思います。 もちろん貯蓄などに余裕がある人はいいでしょうが、そうでない人は大変です。

僕が月に一度くらい顔を出す駅前の焼き鳥屋の親父さんは、3月から真っ青な顔をしてました。
客足がすっかり鈍ってしまい、売り上げが激減してしまったからです。
ひとりで切り盛りしているのですが、4月になって緊急事態宣言が出されてからは、自粛要請もあり、休業はしないものの午後8時で営業を終了です。
5月の大型連休に顔を出したら、「いったい、いつになったら10万円ての、もらえるのか?」と話しかけてきました。

お店を開けていても、午後8時までの自粛要請に
応じていればもらえる協力金

一人10万円の特別定額給付金のことです。
「役所から書類が送られてくるから、それが来てからですね」と言ったら、黙ってしまいました。
もしやと思って、東京都が独自に作った「東京都感染拡大防止協力金」の申請はしたのか聞いてみたら、していないというのです。
ニュースで、自粛要請に応じた事業所で1ヶ所なら50万円、2ヶ所以上なら100万円もらえる協力金です。ちょうど緊急事態宣言が延長されて、1ヶ所でも、もう50万もらえると告知されたばかりです。
親父さんの焼き鳥屋なら100万円もらえるのです。
「50万円のあれだよね。しかし、どうせもらえないんだろう? うちは営業やってるし」と半ば諦めているのです。

自粛要請に応じて午後8時までで閉店している飲食店は協力金の支給対象であることを話したら、びっくりしていました。
でも申請の方法はわからない。
ネット環境もないのです。
次に出かけた時に、ネットで書類をダウンロードして渡して、書き込みかたを説明し、他に本人確認書類のコピーなどを3通提出するだけで100万円もらえると説明しました。
実は手続きは非常に簡単なものなのだったのです。話して良かったと思いました。
4月分の申請は6月15日が締め切りです。
どうせもらえないのだろうと面倒くさく思って何もしないままにしておけば、そのあとに申請してもお金がもらえなくなるかもしれません。

収入が減った人に、個人でももらえる持続化給付金

国の制度では、1ヶ月でも前年と比べて収入が50%以上減った月があれば、法人なら200万円、個人事業主でも100万円まで支給される「持続化給付金」制度もあります。
こちらは申請が20201年1月15日までとまだ日程があるので、そのうちまた説明しに行こうと思います。
さらに、家賃補助を3分の2まで半年間出す、というものも行政が検討していると話しておきました。

こうした、新型コロナウィルスに関する給付金などのニュースは、報道されるものが、アベノマスクといわれる布製マスク2枚と、1人10万円の特別定額給付金の話ばかりです。
これらは、行政側からマスクや書類が送られてきますし、児童手当が1回のみ1万円の上乗せも特に手続きは必要ありません。

他にも個人でもらえるものがあります。
しかし、こちらは自ら手を上げないともらえないものばかりです。
例えば、フリーランスや個人事業をされている方には先述の「持続化給付金」で100万円もらえるかもしれません。
例えば、2019年の年間の事業収入が360万円、4月の収入が30万円だったものが、今年は14万円だったら、16万円の減収で50%以上減った月があることになります。給付額は次の計算式で決まります。前年の総売上(事業収入)ー(前年同月比で50%以上以上減った月の売上×12ヶ月)=給付額 となります。

 式に当てはめてみましょう。前年の売上は360万円。50%以上減った月の売上げ16万円を12倍すれば、192万円。360万円から192万円を引いたら168万円。持続化給付金の個人事業者の限度額の100万円を超えます。ですから、給付額は100万円となります。この金額が振り込まれます。申告はネット経由が原則。ネット環境がない場合は、全国に設置されてる「申請サポート会場」から申し込めます。ただし、今はものすごく待たされることが多いようです。
 きちんと、書類を揃えて申請すれば、一人10万円の特別定額給付金以外に100万円がもらえるかもしれません。該当されるかたは、申請してみる価値は大きくあると思うのです。特に、「持続化給付金」は5月下旬になって、雑所得や給与所得として売上がある人も、実態が個人事業主であれば、申請できるように改善されました。

最大9ヶ月間もらえる家賃補助もある

また、家賃は毎月の支出の中でも、最も大きなもののひとつです。
個人であっても収入が大きく減るなど、基準に達していると、家賃補助である「住宅確保給付金」の支給が可能です。
元々ある制度なのですが、新型コロナウィルス対策として、支給基準が緩くなっています。

条件は、貯蓄がある程度か、それ以下の人であること、収入が基準以下の場合であること。適合すれば、最大9ヶ月間の家賃補助が受けられるのです。
貯蓄の基準(資産要件)は、単身者の場合、50万4000円以下、2人世帯78万円以下、3人世帯100万円以下となっています。
そして、申し込んだ月の収入が単身者13万8000円、2人世帯19万4000円、3人世帯24万1000円までなら家賃の補助が「申請すれば」受けられるのです。
この基準をクリアしていると3ヶ月間の家賃補助が支給され、2回延長、つまり最長9ヶ月間までこの援助を受けることができます。

支給金額の上限は単身者は5万3700円、2人世帯6万4000円、3人世帯6万9800円。
これらは、東京23区での基準であり、支給額です。住んでいる地区によって変わります。
単身者でも最大48万3300円受けられるのです。無視できない金額ですよね?

公的支援のほとんどは、アクションを起こした人しかもらえない

もう一つ、「緊急小口貸付」があります。
無利息、無保証人で借りられるものです。
制度はいろいろと利用すれば最大80万円まで借りられることになっています。
そして、あまり知られていないのが、この制度は貸付なのですが、借りた後で、大きな災害にあったり、ケガや病気、もしくは、収入がないか少ない状況が続いた場合(住民税の所得割が非課税状態)には、返済が免除されることがあるのです。

他にもいろいろな制度があるのですが、これらは、自分で調べ、準備し、申請しないとお金はもらえません。
知ってる人だけが得をする。
動いた人だけが恩恵を受けられる。
それが、ほとんどの行政サービスの実態なのです。

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おひとりさまの家計経済学

佐藤治彦

「普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話」「普通の人がケチらず貯まるお金の話」でシリーズほぼ12万部の経済評論家、佐藤治彦のおひとりさまと、将来おひとりさまになりそうな人が、直面する経済と生活の問題を真正面に取り上げて、その具...もっと読む

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コメント

kawac "知ってる人だけが得をする。 動いた人だけが恩恵を受けられる。" - 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

Shukuba_Bob 公的支援のほとんどは、アクションを起こした人しかもらえない https://t.co/bOP5OMOkvd 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

mikakofuse 公的補助のほとんどは理解して申請したひとしかもらえない ネット環境の無い飲食店の場合|佐藤治彦| 約1ヶ月前 replyretweetfavorite