ウジノワキイラツコと皇位を譲り合う②
♦前回のお話→皇位を譲り合う兄弟「どうぞ」「いやいや。どうぞ」【第16代①】
その後、オオヤマモリは常々、先帝が自分を皇太子に立てなかったことを恨んでいましたが、重ねて今回のことも怨みに思いました。そこで、
「私が皇太子を殺して、皇位に上ろう」
とたくらみました。オオサザキは、その謀(はかりごと)を前もって聞いていたので、秘かに皇太子に、兵士を備えて身を守るように伝えました。
皇太子は、兵を配備して待ち受けていました。
オオヤマモリはそれを知らずに、数百人の兵士を率いて真夜中に出発しました。
明け方に菟道(うじ)に着き、宇治川を渡ろうとしました。
そのとき、皇太子は、粗末な着物を着て、密かに渡し守に混じってかじを取り、オオヤマモリを船に乗せて渡しました。
川の中ほどに来たとき、皇太子は、渡し守に命じて船を踏み傾けました。