「伸ばさない」と、呼吸筋が衰える
体を伸ばさず、前かがみの姿勢が続くと、胸郭や横隔膜の可動域が狭くなることも見過ごせません。
胸郭というのは、12対の肋骨や胸椎によって構成されていて、心臓や肺をガードしている骨の籠のようなものです。脇腹を触ると、肋骨が何本か並んでいるのがわかると思います。それが、胸郭の一部です。
実は、胸郭はがっちりと形が固定されているのではなく、呼吸に合わせてふくらんだり、縮んだりしています。というよりも、むしろ「胸郭がふくらむことで、肺に空気が取り込まれている」と言う方が正しいでしょう。
胸郭は骨の籠であるにもかかわらず、どうしてふくらんだり縮んだりできるのでしょうか。その理由は「呼吸筋」にあります。
呼吸筋というのは、呼吸に関わる筋肉の総称で、主に肋骨の隙間を埋めている肋間筋や横隔膜を指します。そして、これらの呼吸筋が伸縮することで、胸郭も連動してふくらんだり縮んだりしているのです。
つまり、肺にたっぷり酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するためには、呼吸筋がしっかり機能する必要があるということです。
ところが、現代人の多くは、呼吸筋を充分使えていません。速くて浅い呼吸が習慣化していたり、前かがみの姿勢が続くことで、胸郭を動かせる範囲が狭まったりしているからです。そうすると、呼吸筋は伸縮する機会を奪われ、どんどん衰えていきます。その結果、さらに速くて浅い呼吸になり、全身の酸素量が不足するという悪循環に陥ってしまいます。
したがって、体の不調を吹き飛ばすためには、実は、ただ単に体を伸ばし、気道や血管をストレートにするだけでは不充分。道を整備するだけではなく、その道に、必要なものをパワフルに流す力も必要なのです。