第6回】インターンの心配

ついに始まったザックの編集作業。予想通りの厳しい直しとサディスティックな侮辱の言葉にノーラは大満足。しかしインターンのウェスリーは心配な様子で……。大人の女性に極上の恋愛を届け続けるハーレクイン社の刺激的な新レーベル”エロティカ”より、9月15日に発売された小説『セイレーンの涙――見えない愛につながれて』の一部をお届けします。

 すべてが痛い—背中、腕、手首、指、首。あらゆる場所がこんなに痛いなんて数年ぶり、あの昔の日々以来だ—ノーラは思った。ザックは冗談を言ったのではなかった。彼は残酷な編集者だ。そして予想どおり私のお尻を蹴飛ばしている。ノーラの顔がついほころんだ。お尻を蹴られるのがどれだけ好きか、自分でも忘れていた。

 ザックが書いた最初の数章についてのメモに目を通す。彼にかなりサディスティックな傾向があるとわかってうれしい。鞭は使わなくても言葉責めの才能がある。ノーラの編集者となって三日、ザックはすでにノーラを“淫売作家”、その作品を“メロドラマ” “躁病的” “非衛生的”と呼んだ。“非衛生的”というのはノーラも気に入っている。

 痛む背中を伸ばしていると、ウェスリーがオフィスに入ってきて、デスクに向かい合った安楽椅子にどすんと腰を下ろした。

「書き直しの調子はどう?」

 彼が尋ねた。

「最低。三日目で書き直しがすんだところは……なし」

「なし?」

「ザックが原稿をずたずたにしたのよ」

 ノーラは紙片を持ち上げてみせた。出版記念パーティーの翌朝、ザックは最初の三章分だけで十枚以上のメモを送ってきた。

「あの人、ノーラにふさわしい編集者なのかな。ほかの人と仕事できないの?」

 ノーラは紅茶を手に取ってひと口飲んだ。私の本が出版されるかどうかは、最終的にザックが決定権を持っていると、J・Pが言っていた。でもその情報はウェスリーには伝えていない。そうでなくてもこの子は私のことを心配している。

「たぶん無理ね。J・P・ボナーはずいぶんザックに頼みこんだみたいだし」

 ウェスリーは肩をすくめて腕組みをした。

「あの人、ノーラにひどい態度だったよ。それはどうなの?」

「他人を奴隷のように扱う人なのよ。でもそういうところがいいわ。いろいろ思い出しちゃう」

 ノーラは背もたれに寄りかかり、紅茶を見つめて微笑んだ。
 ウェスリーがうめいた。

「いまソルンを持ち出す必要がほんとにある?」

 ノーラは顔をしかめた。ウェスリーはノーラが元愛人の話を持ち出すのをいやがる。

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セイレーンの涙—見えない愛につながれて

ティファニー・ライス

大人の女性に極上の恋愛を届け続けるハーレクイン社から、刺激的な新レーベル“エロティカ”が初めて刊行されました。これを記念してcakesでも、“エロティカ”から9月15日に発売された小説『セイレーンの涙――見えない愛につながれて』の一部...もっと読む

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