どうも。 やっちまいました……首を、こう、グイっと…… ただ、くしゃみをするだけのハズが、信じられないくらい勢いがついて信じられない方向へ曲がったんです。
人生2度目の「ぎっくり首」になりました。 現在はX JAPANのYOSHIKI様のような、首専用のコルセットを装着し、後ろから話しかけられても決して首だけで振り返らず、身体ごと振り返り、次いつ現れるかわからない「くしゃみ」に怯える毎日です。
でも、幸いなことに自宅から徒歩5分のところに整形外科ができたんです。 ここまで【地獄に仏】な事があるだろうか……いや、無い。
さあて、首コルセットの影響で机に向かえる時間も限られてるのでブッダ話もほどほどにレッツゴー♪
初めて髪の毛を染めた日
前話にて、何とか花組の組子としての一歩を踏み出し、お稽古に勤しんでいたある日の休日。 花組生として初めての公演である『ファントム』の初日を目前に、その作品の登場人物としてふさわしい髪型、髪色にするべく、美容院へと向かった。
実は、タカラヅカの大ファン時代、私は男役さんの「金髪」に類まれなる憧れを抱いていた。
特に心臓を射抜かれたのが、花組公演『源氏物語 あさきゆめみし』の匠ひびきさんの頭の中将様。平安時代のお公家様がまさかの金髪で、ポスターを見た瞬間に
「何だこれは……! 日本物で金髪なんてロックだな……でも……アリかも」
となった衝撃は今でも真新しい。
幼き頃は、日本人は黒髪の方が多いわけだけれども、タカラジェンヌさん達は金髪の方が多いんだなあ。海外の方なのかなあ、と本気で勘違いしていたのだが、タカラジェンヌになって初めて、作品ごとに、演じる役柄に合わせてヘアスタイルやカラーを決めていることを知った。
演じる役が「ロンドンの下町育ちの青年」なら「光が当たると透き通るような茶金髪」に、「稀代のプレイボーイ」なら「誰もが膝から砕け落ちる美しいゆるふわウェービーなプラチナアッシュ」に、「黄泉の帝王」なら「人間界では見たことも無い、蒼みがかった黄泉色」に……。 役のイメージに合わせて、演出家の先生のイメージを元に自分でプロデュースしていく。
そして「今回の役はこれこれこういう感じなんで~」と、美容師さんに伝え、染髪してもらう。
……なんだろう、ものすごくカッコイイ。なんだろう、ものすごくれっきとしたタカラジェンヌの一員ぽい。
「こうなったら、一気に金髪にしてしまおうかしら。ウフフ」
と、期待に胸を震わせながら美容院へ辿り着いた。
だが…… 私に与えられていた役は「パリの男」「ビストロ客(男)」などだった。 この役は、他にも演じる方がいるので、隣に立つ方とあまり被らない方が良い。
更に、人生初の染髪だった私は、最初から金髪にすることが「ロック」すぎて怖気づいてしまった。結果、美容師さんには「今(地毛)より少——しだけ明るくしてください」と伝えた。
染髪後の帰り道、地毛より少——しだけ明るくなった髪の毛を見ながら
「ああ、これじゃあただ髪の組織にダメージ与えただけじゃん……」
と、心の中で猛反省しながら、同期とのお話合いへと向かった。
すると、そこには地毛より少——しだけ明るい髪色になった9人の同期がいた。
早変わりの精鋭部隊
『ファントム』という公演は、最下級生まで沢山の場面に出演している(前話参照)。 出演できる場面の数は作品によってかなり変わってくるので、沢山出演できるのはとても嬉しい。
しかし自分に与えられた役は、主役級の方々の様な、最初から最後まで同じ人物である「通し役(プリンシパル)」ではなく、場面場面で全員役柄が異なっている「アンサンブル」。
しかも、今回の作品は町の男からオペラ座の客、ビストロの店員や、はたまた妖精など、かなりシチュエーションの違う役が多かったので、その都度衣装を変更しなければならなかった。
もちろん、通し役の方も着替えられるが、我々最下級生までほぼ全員が同じタイミングで「次の出番」というタイムリミットまでに衣装チェンジしなければならない時は、お衣裳替えを手伝って下さるお衣裳部さんの手も限られているため、できるだけ自力で着替えるスキルを身につけなければならない。
衣装の「早変わり」は宝塚音楽学校の生徒が「タカラジェンヌ」として最初に身につけなければならない、大切なスキルだった。
やり方については、一学年上の上級生の方から伝授してもらい、早く着替えられるよう、事前に準備することなども教えてもらっていた。
だが、「まあ、なんとかなるだろう」と甘く見ていた私は、あまり入念な準備はせずに舞台稽古を迎えた。
そして、初めて最初の場面から次の場面に着替える時が来た。
タイムリミットは、「2分50秒」。
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