行為が目的ではないレズ風俗?!#28

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する橘みつさん。ついに在籍するお店のオーナーに独立を宣言します。そこにはレズ風俗業界で生きていくという決意と、この業界でやりたい「あること」がありました。

「だから辞めたいんです。久住さんがわたしのこと、評価してくれたから。わたしをこの業界に引っ張ってくれたのは久住さんだし、ずっといい形で応援してくれました。でもこれからは、もっと自分ができることの幅を広げたいと思い始めました。久住さん、言ってましたよね、この業界は楽じゃないって。それがよくわかってるからこそ、いま独立したい。自分の足場固めて安定させて、この業界でもっとやっていきたい。そのためには自分だけでやるしかない、そう思ったんです」

久住はぷしゅっと息を吐き出した。「みつさんとは、ずっとやっていけると思ってました。久しぶりにタッグを組んでうちでやっていけると思ってたんすよ。それなのに、こんな……」久住のやけにぱっちりした二重まぶたの目には、二日酔いの名残だけではない若干の感傷が確かにあった。レズ風俗業界は、何年も継続してやっている人はほぼいないし、在籍しても短期間でいなくなってしまうことが多い。安定して稼ぎにくいこともあり、所属する女の子も一時的なその場凌ぎとして勤務せざるを得ない。だからお店の経営者と風俗嬢の関係も希薄になりがちだ。それでも、わたしと久住はずっとこれまで付かず離れずでやってこられた。それは自分がお店の稼ぎ頭だから重宝されてきたということもあるが、それ以上に共に生き抜いてきた仲間だという感覚もあった。風俗経営者である久住もまた、孤独だったのかもしれない。

経営は大変だよ女の子の管理も集客もしんどいよ、小さい店は生き残れないんだよ潰されるよという久住の粘りに辛抱強く答えていると、最後の最後は天井を見上げて根負けしてくれた。はあ、しょうがないっすねといって鼻をすんすんと柄にもなく可愛らしくすする。

「やってみたらいいんじゃないっすか。どこまでいけるかはわからないけど、みつさんならできるかもですね。でも店を持って運営して行くって、本当に大変で一筋縄では行かないです。個人ではいくら優秀でもプレイヤーと経営者は違うから、歯がゆいこともあると思います」

わたしは力強くうなずいた。「わかってます。思いもよらない大変なこともあると思う。でも自分の可能性はできる限り広げたい。勝負したいんです、この業界で」

久住はがぶりと飲んだカフェオレの泡を唇の端につけたまま、ニヤリとした。

一人で自宅に帰ってから、ノートパソコンと手帳を交互に見ながら格闘する。しのぎのアルバイトとして、スケジュールに向こう3ヶ月分は予定を詰めた。少なくともあと数年は、風俗業とアルバイトとの両輪は覚悟しなくてはいけない。そして次に、自分の店のコンセプトを決めてサイトを作らなくてはならない。風俗はネット経由でたどり着くことがほとんどだから、ここは手を抜けないのだ。それに、以前の久住の店のHPのような派手な下着姿のお姉さんたちが舞い踊るデザインだけはなんといっても避けなくてはならない。いや、避けたい。

最初にお店に所属しようと思っていたとき、どんなことを考えてレズ風俗サイトを見ていたんだっけ? あの違和感はわたし以外の人も内心感じていることなのかもしれない。だったら、それを逆手に取ってみたら?セックスでもエロでもなく、わたしのところに来てくれた人たちが、本当に求めていたこと。

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レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話

橘みつ

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する著者は、なぜ、レズ風俗で働くのでしょうか? お客さんの「人生のきっかけ」を共に探したいと願い、これまで200人以上に向き合ってきた彼女が、どんな人生をおくり、い...もっと読む

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