この季節になると毎年のように「なるほどねー」と思う季語の一つに、「色なき風」があります。要は秋の風のこと。秋と言えば葉っぱが色づいたり果物が実ったり、漠然と暖色系のイメージを抱いてきたので、知った当初は首を傾げたものでした。でも、常に汗ばんでいたTシャツと肌の間を、さら〜っと風がぬけたりすると、あ、これのことかな、と思う。朝、窓を開けた時に、暖かさも冷たさもなく、ただ肌を撫でるだけの風を感じると、たしかに無色だなあと思います。
「爽やか」が秋の季語に分類されていると知った時も「……?」。四月五月も爽やかじゃん、と思ったものです。しかしながら、例えば〈ミシン踏みまた爽やかにミシン踏む〉という渋沢渋亭(渋沢栄一の息子)の句は、うーん、やっぱり春ではない。ミシンの音が空中に抜けていった先に、秋の空の高さがあるような。
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