武田砂鉄
他の閣僚はアベノマスクをしない
大炎上したオールナイトニッポンでの岡村隆史の発言を元に、未だほとんどの家に届かないアベノマスク問題について考えます。西村康稔経済再生担当大臣が着用しただけでニュースになるくらい、ほとんどの閣僚が着用さえしないアベノマスクから何が見えるのか、武田砂鉄さんが考察します。
岡村隆史の発言
深夜ラジオのノリがわからない人がネットニュースを見ただけで岡村隆史を叩いている、なんて声も目立ったわけだが、「コロナが収束したら絶対面白いことあるんですよ。なかなか苦しい状態がずっと続きますから、コロナ明けなかなかの可愛い人が、短期間ですけれども、美人さんがお嬢やります。短時間でお金を稼がないと苦しいですから」が「深夜ラジオのノリ」だとされると、それなりに深夜ラジオを聴いてきた身としてはとても困る。
いくつもの深夜ラジオを聴いている人は、もちろん、全ての深夜ラジオを聴いているはずはなく、選別して聴いているのだから、ここにきて「深夜ラジオのノリ」というスケール感で鉄壁を設けようとするのは無理な話だ。大好きな話者の発言を問題視する前に、大好きな話者をどう守るかの整備が急がれた感じこそ、その話者がいかに放牧されてきたかの証左である。誰がどう殴られたかよりも、殴り方の査定が優先されていた。そして、相方の説教が、たちまち「いい話」に変換されていく腕力に、改めてマチズモが可視化されていた。
火事場泥棒というより
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この連載について
武田砂鉄
365日四六時中休むことなく流れ続けているテレビ。あまりにも日常に入り込みすぎて、さも当たり前のようになってしったテレビの世界。でも、ふとした瞬間に感じる違和感、「これって本当に当たり前なんだっけ?」。その違和感を問いただすのが今回ス...もっと読む
著者プロフィール
ライター。1982年生まれ。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリー。著書に『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社、2015年、第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)がある。2016年、第9回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞を受賞。「文學界」「Quick Japan」「SPA!」「VERY」「暮しの手帖」などで連載を持ち、インタヴュー・書籍構成なども手がける。
Twitter:@takedasatetsu