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こんにちは、きのコです。
最近、新型コロナウイルスの影響による自粛のストレスで、モラルハラスメントやDVが増えているというニュースを目にします。私はこのような状況に対して何かできれば…と思い、先日の記事でも触れたイベント「もらはら研究会(もら研)」を開催しています。
『DVはなおる』という本を読んで気づいたこと
もらはら研究会とは、SEX and the LIVE!!プロジェクトで一緒にアクティビストをしているたかだまなみさんと立ち上げた会。
世に溢れるモラハラを包括的に分析・研究し、加害者心理や被害者にならない方法などを探り、参加者の経験も取り込んで、楽しく明るくエンパワメントできるような発信をしていきたいと考えています。スローガンは、「モラハラの先に希望を」。
今回のもらはら研究会は、「DVはなおる」オンライン読書会 〜加害者更生を語ろう〜。
DVを終わらせるための新しい援助論や回復当事者の生の声を伝える書籍、味沢道明『DVはなおる DVを終わらせるための提案と挑戦』を読み解き、被害者と加害者の分断を超えた世界について考えました。
読書会は、アクティブ ブック ダイアローグ(ABD)という手法を用いておこないました。
アクティブ ブック ダイアローグとは、1冊の本を分担して読んでまとめる、発表・共有化する、気づきを深める対話をするというプロセスを通して、著者の伝えようとすることを深く理解でき、能動的な気づきや学びが得られる読書手法です。
私は自分の担当箇所を読んで、以下のようにサマライズしました。
葛藤を抱えるDV加害者
そもそもDVとは法的制度的には犯罪であり加害行為ですが、この本ではさらに「脆弱な自我を防衛するための稚拙な反応のひとつ」であり、「パワーコントロールによって相手からの攻撃を防ぎ、自我を防衛するすべての行為」と定義づけられています。
脆弱な自我とは、環境や状況のストレスに対して柔軟かつ安定的に対処しえず、葛藤として認識し不安定になる自我のこと。
一方で安定的な自我とは、自己受容ができていて自己一致しています。他者の承認があろうとなかろうと、あるいは他者の批判や攻撃があろうと、過度の不安や怒りを感じることなく、冷静にかつ客観的に状況や関係を理解し対応することのできる心理的な能力を持つ自我を指します。
加害者は自分の加害行為について、「怒らせるお前が悪い」と暴力を正当化します。脆弱な自我を相手の攻撃(?)から防衛するためには、「力で相手をコントロールするしかない」と無意識領域で瞬間的に心が働くのです。これは、精神分析でいう「防衛機制」にあたります。
また、加害者は自己肯定感が低く、他者の評価に依存しています。心の奥底には自信のなさや不安があり、自分を受け入れることも愛することもできません。「自己受容できない」と「理想が高い」の不一致から葛藤を抱えやすく、自分を嫌悪するからこそ、理想の自分に向かって努力を怠らないのです。
DV加害者が一方で「努力家」「面倒見がよい」「責任感が強い」「優しい」というポジティブな他者評価を受けることが多いのもまさにこれが原因。他者に対する優越、他者からの評価で自己防衛しているという意味では同じなのです。
そして、加害者更生のポイントは、加害者が自らを自己受容すること。様々な立場の人との対話によって、加害者は育ち直していくことが可能なのです。直接の被害者が加害者を更生させようとするよりも、福祉機関やNPOなどの第三者的な組織が必要です。
Iさんのモラハラ行動も変わるかもしれない
私は今回、この本を読んで皆と対話していく中で、Iさんのモラハラ行動も変わるかもしれない、という希望をもちました。
モラハラやDVについては今までさまざまな本を読みましたが、どの本にも「モラハラやDVは治らない。対話して理解しあおうと思っても無駄。加害者からは逃げるしかない」としか書いていない。それは結局、”排除の論理”でしかないのでは?と、学べば学ぶほど絶望的な気持ちになっていたのです。コミュニケーションや対話についてずっと考え活動してきている私としては、彼を私の人生から切り捨ててしまってはいけないのでは…という迷いもあります。
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