<遺伝子>
本当に伝えるべきはゲノムではなく ミームなのである。
長く「捨てる」について、論じてきた。
モノを持つことから早くに解放されている僕には、そもそも「捨てる」ことの意味が、よくわかっていない。「捨てるのがいいのはわかっているけれど、捨てられない」という人の気持ちを理解することは、根本的には無理なのだろう。
僕はそれで、いいと思う。
捨てるのがうまい人と下手な人。どちらの属性の人も共存しているのが、あるべき正しい世界だ。
邪魔なものが片づけられないまま、散らかっている。それもまた多様性の視点では豊かな状態だ。何かのエネルギーを生み出す出発点となるかもしれない。
ただそれは広い観点の話。個人で見るなら、不要物は「捨てる」の一択に尽きる。
「捨てられない」という人は、「ゲノム」と「ミーム」の関係で考えよう。
ゲノムとは遺伝情報の総体であり、ミームとは文化のなかで人から人へと広がっていくアイデアや行動、スタイルや慣習のことだ。
双方の相関関係はIT工学、生物学のどちらの分野にも詳しく論考されているので、詳しく学びたい人は専門書を読んでみてほしい。
人生においてはゲノムより、ミームの方が大事だ。
僕は遺伝情報そのものを記録した物体を保つより、本質的なもの──〈意志〉や〈精神〉〈心に描いている実現したい自分自身〉が、拡散・継承されていく方が、生きていく証になるのではないか? と考える。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。