高校生のころ島田雅彦の小説が好きで、たくさん読んでいた。青二才とかサヨクとか、徹底してイケていない感じが良かった。60年代風の時代遅れなアイテムを華麗に使いこなすイケメン作家、というだけでかっこよかったのだ。
彼を通してヴィトルド・ゴンブローヴィッチを知った。ポーランドの青二才作家、と言われただけでも、ものすごく読みたくなってしまう。古本屋を探し回ったあげく、早稲田にある穴八幡宮境内の古本市で、1970年刊のバージョンを見つけた。
内容は、大人げない主人公がとにかく周りに突っかかりまくる感じで、僕はこうしたサリンジャーや太宰治みたいな作品が大好きだから、すっかり気に入ってしまった。そして他の作品も全部翻訳されればいいなあ、なんて思ったりした。
大学に入ってもポーランドのことはなんとなく気になっていた。そのうち、ワルシャワ大学日本語学科からの留学生と知り合い、ブルーノ・シュルツの作品をもとにした絵本をもらった。難解な短編を書いていてナチスに射殺された作家だ。白黒の画面では、僕の読めない言葉で、暗黒な感じの物語が展開されていた。
今ではゴンブローヴィッチの『フェルディドゥルケ』も『シュルツ全小説』も平凡社ライブラリーで簡単に手に入る。おまけに西成彦さんのおかけで、ゴンブローヴィッチの長編『トランス・アトランティック』まで日本語で読める。時代も変われば変わるもんだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。