第9話 みんな娘がほしいわ

現在、文学の世界では何が起こっているのか。そして世界の中で文学はいまどのような位置にあるのか。国境、人種、ジェンダーなどさまざまな枠組みが大きく変わりつつある21世紀にあって、文学はどのように変わろうとしているのか。世界文学の最先端と日々向き合っている都甲幸治さんが「21世紀の世界文学」をさまざまなトピックから紹介してゆきます。第9回は20世紀の歴史と真摯に向き合うポーランド文学について。

 高校生のころ島田雅彦の小説が好きで、たくさん読んでいた。青二才とかサヨクとか、徹底してイケていない感じが良かった。60年代風の時代遅れなアイテムを華麗に使いこなすイケメン作家、というだけでかっこよかったのだ。

彼を通してヴィトルド・ゴンブローヴィッチを知った。ポーランドの青二才作家、と言われただけでも、ものすごく読みたくなってしまう。古本屋を探し回ったあげく、早稲田にある穴八幡宮境内の古本市で、1970年刊のバージョンを見つけた。

内容は、大人げない主人公がとにかく周りに突っかかりまくる感じで、僕はこうしたサリンジャーや太宰治みたいな作品が大好きだから、すっかり気に入ってしまった。そして他の作品も全部翻訳されればいいなあ、なんて思ったりした。

大学に入ってもポーランドのことはなんとなく気になっていた。そのうち、ワルシャワ大学日本語学科からの留学生と知り合い、ブルーノ・シュルツの作品をもとにした絵本をもらった。難解な短編を書いていてナチスに射殺された作家だ。白黒の画面では、僕の読めない言葉で、暗黒な感じの物語が展開されていた。

今ではゴンブローヴィッチの『フェルディドゥルケ』も『シュルツ全小説』も平凡社ライブラリーで簡単に手に入る。おまけに西成彦さんのおかけで、ゴンブローヴィッチの長編『トランス・アトランティック』まで日本語で読める。時代も変われば変わるもんだ。

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世界文学の21世紀

都甲幸治

現在、文学の世界では何が起こっているのか。そして世界の中で文学はいまどのような位置にあるのか。国境、人種、ジェンダーなどさまざまな枠組みが大きく変わりつつある21世紀にあって、文学はどのように変わろうとしているのか。翻訳家として、研究...もっと読む

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