乾杯の挨拶はつまらない
テレビ番組が総集編ばかりになっており、トーク番組では、選りすぐりの場面が数珠つなぎになる。曲でいえば、ずっとサビが続くような状態だが、そこで何がカットされているかといえば、エンジンがかかる前の他愛もないやり取りである。トークの導入で問われるお決まりの二大勢力といえば「休みの日は何してるの?」と「さぞかしモテてきたでしょう?」である。秒単位・分単位で視聴率の変動を確認している人たちがこの展開を欠かさないことからわかるのは、この問いかけから発生する「お決まりの意外性」(=インドアなんですorいやいや、全然モテなかったです)を視聴者はそれなりに待望している、という事実である。
日常生活の中で、立場のある人が、「そのうち〇〇さんに追い抜かれちゃうと思うけどね」的なことを言い、「いやいや、そんなわけないじゃないですか」的な返しを待ち構える場面がある。自分がそういう場に遭遇すると、その返しをせずに相手を静かに動揺させる悪趣味を持つ。「まぁ、乾杯の挨拶でございますから、みなさん、『早く飲ませろ!』なんて思っていらっしゃるはずでございまして……って、早速、こういう前振りが長いんですよね、まったく!」「(会場笑)」みたいな場面に立ち会うと、逃げ出したくなる(本当に逃げ出すこともある)。でも、みんな、それなりに楽しそうしている。どうしてあれが楽しいのだろうか。
「自分でもめっちゃかわいいなと思いますよ!」
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