【第9回】
死者・犯罪・暴動を生み出す食べ物
—世間にあふれる無意味な統計解析

あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。 どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたしてどれだけの人がその本当の面白さを知っているだろうか。この連載では、cakesという新しいプラットフォームに相応しい、最新かつ最も刺激的な統計学の世界を紹介したい。(毎週火・金更新)

ツッコミどころが多すぎる

 前回の解説で統計解析は3つの問い、すなわち

【問1】何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
【問2】そうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
【問3】変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか?

のすべてに答えなければならないと述べた。

 もちろんどんな状況においても必ず統計解析結果の数字だけで3つすべての問いに答えられるというわけではなく、データからはどうしても判断しきれない部分について経験や勘が重要になることもある。

 しかしながら、実際に達成可能で、投資するコストに対しての十分な見返りが期待できるアクションが何か、まったく明らかにすることができない統計解析をするぐらいなら、最初から経験と勘だけで物事を決めていたほうがよっぽどマシである。

 前回も述べたように、私自身、仕事の場で「結局のところビジネスはデータや統計なんかじゃわからない」というマッチョイズムあふれたビジネスマンと出会うこともある。しかし、実際よく話を聞いてみると「ビジネスはデータや統計なんかじゃわからない」というよりも、「ビジネスに意味をなさない統計解析しか見たことがない」というほうが正しいようだ。

 たとえば彼が以前起用した外部のマーケターは「プロモーションキャンペーンの評価レポート」として次のようなグラフを提示したらしい。

 この結果をもってマーケターは「〈見た・たぶん見た〉を合わせると46%で約半数の高い認知率を獲得しました! おめでとうございます! キャンペーンは成功でした!」と主張したというのである。そしてマッチョイストな彼は「その割には自分の周りでうちのキャンペーンの話なんか全然聞かないんだけど……」と不信感を募らせたらしい。

 彼の懸念はまったく正しい。このマーケターの調査は、あるいは調査結果に対する解釈はデタラメである。おめでたいのは彼の仕切ったキャンペーンの成果ではなく、彼自身の統計リテラシーのほうなのだ。

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統計学が最強の学問である

西内啓

あえて断言しよう。あらゆる学問のなかで統計学が最強の学問であると。 どんな権威やロジックも吹き飛ばして正解を導き出す統計学の影響は、現代社会で強まる一方である。「ビッグデータ」などの言葉が流行ることもそうした状況の現れだが、はたして...もっと読む

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