大当たり定食屋を見極める、意外なポイント10【取材こぼれ話】

地元民から愛される絶品メニューがある。キャベツがぱりっと新鮮。漬け物はできる限り自家製。安い。女ひとりもOK。5条件を満たす定食屋を『東京の台所』の著者・大平一枝(おおだいらかずえ)が訪ね歩く。儲けはあるのか? 激安チェーン店が席巻するなか、なぜ地価の高い都会で頑張るのか? 絶滅危惧寸前の過酷な飲食業態、定食屋店主の踏ん張る心の内と支える客の物語。番外編で大当たり定食屋を見つけるポイントを紹介する。

いまだに手紙で取材交渉。取材拒否の荒波に揉まれて

 本連載は、編集者のモトさんとカメラマンの難波雄史さんと3人で回っている。手前味噌で恐縮だが、じつは取材の店が決まるまでに、ひどく時間と手間がかかっている。

 まずモトさんと私で、互いに自腹で気になる店をロケハンし(客として食べる)、好印象だったら、感想と写真を送り合う。→推薦された店に自分も行って実食。→ふたりの意見が一致したらモトさんが取材交渉。
 ところが、私たちがいいと思うところは店主の年齢が高めな店が多く、見事なまでに、たいがいHPもメールアドレスもない。そもそもパソコンに向かう時間など1分もなく、SNSから一番遠いところで商いをしておられるのである。

 だからモトさんはほとんどの店に、いまだに手書きの依頼文と過去の作品のコピーを同封し、郵送している。

 ところが2軒に1軒は、「常連さんに迷惑をかけたくない」「昔から取材は断っている」という理由で断られる。アポ取りに関してトリモチより粘着力の強いモトさんはへこたれず、「そこをなんとか」と、なるべく手の空いていそうな迷惑にならない時間帯に電話でお願いする。
 結果、そこまで言われちゃしょうがないわね、と今までほとんどマスコミに出なかった店が胸を開いてくれることもある。その筆頭が、きさらぎ亭(桜新町)である。クラウドファンディングで生き返ったこの店は、その後テレビや雑誌に取り上げられることとなった。 つまり、この1年半にふたりで試食した店は掲載分の何倍もある。

 そこで、今回はそれらの共通項から、大当たりの店に当てはまる定義を独断で考えてみた。個人経営店はみな”俺流””私流”なので例外はあるが、隠れた名店を見極めるチェックポイントにはなっているはずだ。複数チェックが入れば入るほど、定食偏差値が高い。食べログには載っていない良店を探す手助けにしてほしい。

1)メニューが手書きである

 旬の食材を出すので、季節に合わせて手書きの札を追加したり、取り下げたりしている。1年中同じメニューということは季節によって“冷凍もの”を扱うということ。とくに魚に味の大差が出る。

2)店主と会話がない

「安いものをたっぷりおいしく」のためには、人件費を削る。いきおい、店主含め従業員も戦争のように忙しい。ドラマのように客とのんびり会話をしている暇はない。

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台所の数だけ、人生がある。お勝手から見えてきた、50人の食と日常をめぐる物語。

東京の台所

大平 一枝
平凡社
2015-03-20

この連載について

初回を読む
そこに定食屋があるかぎり。

大平一枝

絶滅危惧種ともいわれながら、今もなおも人々の心と胃袋をつかみ、満たしてくれる「定食屋」。安価でボリュームがあり、おいしく栄養があって…。そこに定食屋があるかぎり、人は店を目指し、ご飯をほおばる。家庭の味とは一線を画したクオリティーに、...もっと読む

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コメント

polarisfa たまたま読んだけどチェックポイントまるかぶりでとっても得心がいく。 6ヶ月前 replyretweetfavorite

yoshinon 概ねそうかもと思いました。 6ヶ月前 replyretweetfavorite

digk349or02cjf https://t.co/maG1P1fVzi 6ヶ月前 replyretweetfavorite

fwbc1965_3 #スマートニュース 6ヶ月前 replyretweetfavorite