じゅりさんは白いバスローブを着て、ベッドの脇に腰掛けている。部屋の照明はわたしがシャワーを浴びている間に暗くなっていて、すべての輪郭が曖昧に闇に溶けていきそうだ。外の明るさも喧騒も、ここには届かない。後ろからベッドに近づきながら、わたしの頭は素早くシミュレーションする。最初にキスをする、じゅりさんを横にする、そしてバスローブの紐を外す。相手の上になって、体だけを求める。そして体の接触だけで終わる。
「じゅりさん」
思わず声に出してしまうと、静寂に沈んでいたこの部屋にわずかにさざ波が立つ。隣に腰掛けると、じゅりさんの黒い瞳がついと下からあがる。
「今日はどうして、レズ風俗を使おうって思ったんですか?」
じゅりさんはほんの少しだけ首を傾げる。そういえば年上の女性と密室で顔を合わせるなんて、滅多にない。黙ると不思議な存在感があった。
「じゅりさんのことをよく知らないままじゃ、うまくできないんじゃないかって思って。変に思われるかもしれませんけど」対面でこれだけ近くにいるのに、薄暗いのと逆光のせいで彼女の顔はよく見えない。じゅりさんの体がわずかに動く。「私のこと、ですか……えっと何だろう」じゅりさんの声が揺れる。一定だった音の波がわずかに崩れてその下には新しいうねり。「あ、もしかして私何か変なことしてました? 実はこういうお店、一回利用したことはあるんですけど、まだよく慣れてなくて」
来た。わたしは聞いた。「何かきっかけがあって来てくれたんですか?」