10月30日
最初に下着ドロボーの話を聞いた時、私は即座に隣のクラスのあの女の仕業だって分かって即ギレしそうになったけど、ちえはやっぱりこんな時でも落ち着いてて 「まあ、他にも気に入らないって思ってた子はいるかもしんないしね」とかクールに言っちゃって、私は余計にイライラして、流石にちょっとは慌てなよ、ってちえに対しても怒っちゃった。
だってこんな状況で疑われるの、ちえしかいないじゃん。うちのクラスと隣のクラス合同の体育の授業中、しかもちえしか見学者いなくて、学校の外周をみんながランニングしてる間に更衣室のロッカーから下着が消えてたなんて。
うちのクラスの子たちもおんなじ意見で、教室はその話題で持ちきりだった。
「だってあの子、ちえに告白して振られたんでしょ」「ぜってー腹いせじゃん」「あの女さ、さっき教室で騒いでたよ、この学校にいるべきじゃない人がいる、とか言ってわざとらしく泣いちゃってさ」「うわ、うっざ。そろそろ潰す?」
サクちゃんは私たち全員を座らせて、本当に馬鹿馬鹿しい、って顔、作って言った。
「あのさ、本当はくだらないから、こんなことやりたくないんだけど。校長がやれっつってうるさいからやるよ。みんな、協力してくれな。……あー、全員、目ぇつぶって。で、隣のクラスの知山の下着を獲った奴がこの中にいたら、挙手しろ」
誰も目を閉じなかった。ちえ以外は。
サクちゃんはため息をついて、はあ、じゃあ、ホームルーム終わりな、って言って、そのまま出てった。
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