いざ!レズ風俗での初仕事#17

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する橘みつさん。いよいよレズ風俗嬢として初めてお客さんに接客することに。待ち合わせ前に新宿伊勢丹でみつさんは入念に準備します。

仕事の手順は何度となく口ずさんできた。待ち合わせて相手の名前を確認、自分の名前を名乗る。道すがら話をして相手の情報や状況をそれとなく聞き出す。ホテルについたら相手の洋服をハンガーにかけて、スマホのアラームをセットする。お会計は必ず最初に。ちょっと喋って、行為に挑む。久住の店のヘルスコースは最短はショートタイムの60分コースで、これは正直かなり短い。もっと長い時間のコースもあるが、風俗の利用経験のない女性からの圧倒的人気は、お試し感覚で利用しやすいショートタイムらしい。ホテルまでの道中を時間外にするとしても、プレイ時間はほとんどない。最低でも2時間程度は接客時間が確保されたホステスよりも、短い時間での勝負だ。その限られた時間の中で相手のニーズを引き出し、満足させなくてはいけない。

顔をあげると目の前にはわずかに顔を引きつらせて無表情の女がいた。顔色は少しだけ白い。ホステスのときみたいな100%の媚びは見透かされそうで、どうすれば良いのか迷った。睨め付けるような目の向こう、裸眼の黒目はちらちら揺れている。カラコンをしてこなかったことを少し後悔する。久住の事前情報によると、今日のお相手の名前はじゅりさんで年齢は30代から40代くらいらしい。登録時に入力してくれた情報はそれだけ。オプション指定や備考欄に申し送り事項がない限り、予約時にわかる情報なんてほとんどないにも等しい。わずかな会話から要望を引き出すか察知しなくてはいけない。

この仕事をするにあたって、自分に「みつ」という新しい名前を付けた。みつはひらがながいい、蜂蜜のみつでもあり、秘密のみつでもあるネーミング、女性のみつという意味も込めて。名前が被りがちな業界の中でも、目立つだろう。「みつ」はわたし自身であり、そしてこの仕事をするときの一つの人格でありたかった。相手の要望に寄り添いつつも、自分の人格を相手に無理に合わせない。嘘はつかない。人として誠実に接するけど、媚びは売らない。自分の中の一面で勝負するのだ。

そういえば、相手はわたしのことを何も知らない。できれば背が高い人がいいというオーダーにわたしが当てられたらしく、相手だって誰が来るのか知らないのだ。一番不安なのは、どう考えても相手の方だ。わたしは総エネルギーを使って椅子から立ち上がった。

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レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話

橘みつ

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する著者は、なぜ、レズ風俗で働くのでしょうか? お客さんの「人生のきっかけ」を共に探したいと願い、これまで200人以上に向き合ってきた彼女が、どんな人生をおくり、い...もっと読む

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SunnySunday_333 #スマートニュース 2ヶ月前 replyretweetfavorite