SF短編集「ピュア」

あいつ、まじ見境なくてキモいよ」

2020年4月に刊行されたばかりの小野美由紀さんの作品集『ピュア』から、収録作のひとつ「バースデー」を毎日更新で全文公開します。
もしもずっと一緒に過ごしていた幼なじみの大親友が、夏休みの間に「変身」してしまったら? ある女子高に起こった「性」をめぐる事件を描いた、少し不思議な青春小説です。
(連載第3回)

 中学3年生の夏休みに、カフカの「変身」を読んで感想文を提出するって宿題があった。

 あの、ある朝起きたら主人公が虫になるやつ。めちゃグロかったし意味わかんなくて、私はみんなと同じようなテキトーな感想を書いて出した。ザムザがかわいそうです、みたいな。その中でちえだけがマジなやつ提出して、それが優秀賞かなんか取って学年通信に載ったから、みんなそれ読んでざわついてた。

“あの家族は、虫になったからザムザを見放したのだろうか。最初からザムザに対する愛なんかなかったんじゃないか。ザムザは一家の大黒柱だったけど、虫になって、役に立たなくなったから殺された。もしかしたらザムザは、本当は最初から虫だったんじゃないか。虫である自分を愛してもらいたくて、虫の姿に戻ったんじゃないか。あるいは、虫の姿になることで、この家族に愛なんてないということを、暴いたのではないか。”

 私はちえがそんなこと考えてるなんて意外で、でも、ちえが家族とうまく行ってないってことはなんとなく知ってたから、それでそんな感想書いたんじゃないかなって思ったけど、ちえは昔から頭良くて、いっつも成績上位が当たり前だったから、そん時はちえ、すげーな、で終わらしてしまった。  ちえの感想文はすごく目立ってて、県のコンクールかなんかに出されたけど、そこでは落選した。

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ピュア

小野 美由紀
早川書房
2020-04-16

この連載について

初回を読む
SF短編集「ピュア」

SFマガジン /小野美由紀

SFマガジン6月号に掲載された小野美由紀氏の「ピュア」を特別公開します。タイトルの通り、ある純粋な性と生を描く遠い未来の物語です。

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Hayakawashobo 連載第3回、毎日更新! 「変身」してしまった幼馴染に、クラスの皆の反応は……? 6ヶ月前 replyretweetfavorite