風俗嬢と最初で最後の抱擁を#16

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する橘みつさん。レズ風俗に採用されたみつさんは、実施研修のために人気レズ風俗嬢なの葉さんのもとを訪れます。何とか人気の秘訣を学ぼうとするみつさんは、彼女にお風呂に誘われます。

服を脱ぐと、なの葉さんは慣れたようにこちらに向きなおる。体は薄く骨に沿って痩せていて、クリームベージュ色の肌のした、骨のありかがところどころはっきりわかる。意外と肩幅は広く、なだらかな胸の下にはゆるやかなカーブが続き、わずかに出っ張った腰骨が滑らかな肌を横に押し広げている。いつの間にかリップを落とした彼女の姿は、ブルーグレーのカラコンも相まってさながらアンドロイドの人形のようだった。体を見られることに、慣れている人の身のこなし方。

浴室に足を運ぶと、床はさらりと乾いていて暖かい。生活感の一切ない浴槽に、なの葉さんはまっすぐな足を沈める。わたしもお湯に身を浸して、小さく膝を抱える。なの葉さんの間に座って、後ろから抱きしめてもらうような形になる。そういえば、あのコミックエッセイにも客と風俗嬢が入浴するシーンがあったっけ。なの葉さんは後ろから、そっとわたしの肩に顎を乗せてくる。体重をかけるのではなくて、ここにいるよというように。

「えりかさん、いいなあ、お肌がスベスベで」

「褒めてくれるんだ、ありがとう」

「もしかしたらリップサービスかもって思われちゃうかもしれませんけど、本当に良いと思ったところを褒めてます」

「そうなんだ……」

「本当に人に向き合いたいなら、お世辞を言っている場合じゃありません。それは人のためじゃなくて、自分を良く思われたいためにしているだけだから」

「……人に求められていることを言うときもあるでしょ?」

なの葉さんは少しだけ黙る。「お客様が求めていることに、無理やり自分を合わせているのとは違うかな。何を求めているのかは一生懸命考えますけど、わたしができることは限定的ですし、限度設定はしてます。でも、その範囲内だったら頑張る。それが私の望みだしお仕事のポリシーでもあるから」

わたしのポリシーは、なんだろう。

体を洗ったあと、バスタオル一枚を身につけた彼女は、そっとすべやかに白い手を差し出す。「来て」

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レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話

橘みつ

世界初の対話型レズ風俗「Relieve」のオーナー兼キャストとして活躍する著者は、なぜ、レズ風俗で働くのでしょうか? お客さんの「人生のきっかけ」を共に探したいと願い、これまで200人以上に向き合ってきた彼女が、どんな人生をおくり、い...もっと読む

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コメント

SunnySunday_333 #スマートニュース 6ヶ月前 replyretweetfavorite

kokomo0723 読んだ記録 コレ面白いんだけど、ずーっと、構成がちょっと惜しい。 https://t.co/vf86bT6mcH 6ヶ月前 replyretweetfavorite